研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -032/066page

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事 例 5 (中学校 3)

喫煙にふける男子中学生の事例

1.主訴    喫煙

2.対象    中学校1年 男子,A夫

3.問題の概要と指導の経過

(1)問題の発端

 入学式の翌日,清掃時1年の女子生徒2名が学級担任(注,女子教員)の所へ息せき切って駆け寄り,「A夫君がタバコを吸っていて,鼻から煙を出している」と訴えてきた。学級担任はとぼけるA夫を問いつめ,キャスター1籍とライターを取り上げた。学級担任は学年主任と共にA夫の話を聞いた。

 A夫の告白である。「タバコを吸ったのは他の小学校から来た者たちへの脅し。タバコは小学校5年の1学期ころ,母の吸いさしをいたずらしたのが最初。そのうち姉の男友達らからも無理に飲まされた。最初のころはむせって嫌だったがだんだん慣れてきた。今は1日20本位吸っている。タバコ代はいっでも自由になる」

 家庭の事情を聞くうちに,A夫が幼少時から愛情飢餓の状態にあり,教師不信の気持ちも非常に強く持っていることが判った。二人の教諭は,A夫の喫煙を喫煙という注意牽引行動でもって女の先生へ母親に代わる愛情欲求を示すとともに,中学校の教師集団の反応を試した行動と理解した。

(2)その後の問題行動

● 4月24日(以下月日を省略)

 タック入りのズボンを着用して登校した。運動ズボンと取り換えさせ,校則を守ることの大切さを指導した。

● 5・4

 額を剃り上げて登校して来た。昨夜B彦,C郎,D幸がA夫宅に宿泊し,A夫がB彦に命じて自分の額を剃らせた。4人の逸脱集団は小学校5年の時,同クラスになり形成された。「これからしないこと」を素直に約束した。

● 5・13

 授業中腹痛を訴えた。学級担任と養護教諭は1時間にわたり,背中をさすってやった。

● 5・17

 ボタンを1つおきに3個取った上着を着用してきた。学級担任は購買部からボタンを購入し,笑みを浮かべながらつけてやった。それを見つめながら,A夫は「夜12時過ぎてもなかなか寝つかれない。だから朝起きられないので遅刻する」と言い,「父はすぐ殴るので恐い。母はお金を欲しいだけくれる。朝食をつくってくれない。朝はほとんど食べて来ない」ともつぶやいた。

● 5・23

 上靴のかかとをつぶして履いていた。学級担任はニコニコ笑いながら腰をかがめ,手を添えて履き直しをさせた。帽子をあみだにかぶっている時は肩を抱くようにしてそれを直してやっている。

● 6・10

 3年生男子を「むかつく」と言って殴った。生徒指導主事が厳しく指導し謝罪させた。

● 6・17

 同級生を恐喝し,1,000円まきあげた。学年主任と学級担任が両親を呼んで指導し,被害者宅にも謝罪に同意した。

● 6・20

 某スーパーマーケットの店長から学校へ,「A夫ら4人が靴と男性化粧品を万引したのでつかまえた」の連絡が入った。以下は4人の話である。「4人のグループのリーダーはA夫。万引の首謀者もA夫。万引の目的はA夫の姉の男友達の機嫌をとるためであった。彼らはよく遊んでくれる。


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