研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -033/066page
万引は3回目。初めて見つかった。休日などには A夫の家に集まり,皆で酒やタバコを飲む」
学年会議で協議し,資料を整えて問題の核心をとらえ,組織的・計画的に指導にあたることにした。
4.資料
(1)本人
● 出生 正常分娩,熱産
● 身体の発達と特徴
身体の発達については特に問題がなかった。背が高くがっしりしている。運動能力にも秀れて いるが,顔色はよくない。● 知能 教研式知能検査 SS 53
● 学習成績 (中1は1学期の成績)
国 社 数 理 音 美 技家 保体 英 小6 2 2 2 2 3 3 3 3 中1 1 1 2 1 2 3 2 2 1 ● 学習態度 (小学校は指導要録から抜すい)
- 小1 理解力はあるが,落ち着きがない。学習用具を忘れる。
- 小2 気分の変化が大で,落ち着きがない。
- 小3 顔色が悪く,学習中生あくびが多い。睡眠不足で授業中居眠りもする。
- 小4 意見が通らないとすぐけんか腰になる。注意を受けるとブツブツ言う。
- 小5 睡眠不足は未だ直らず,あくび,反応の遅さとなり,本人の意欲を低くしている。
- 小6 困難にぶつかると必ずといってよい程避ける傾向がある。注意すると反発する。
- 中1 忘れ物が多い。授業中ぼんやりしている。
● 行動・性格の特徴
学級や学校のきまりを無視することが多い。言葉は粗野である。しかも衝動均で短慮である。
仲間と一緒にいないと心細そうで陰うつな表情をしている。また,いつも不安感にとらわれ,だ れかに話しかけないでいられないところがある。
● 習癖など
小学校入学前まで,指しゃぶり,タオルしゃぶ り,現在はつめかみをしている。(2)家族
● 家族構成と家族成員の特徴
- 父 2軒のスナックを経営し,昼ごろから深夜までほとんど休日もなく働いている。子供の養育に関心が薄い。A夫が何かまずいことをすると,気絶する程殴る。
- 母 夫とともにスナックで働く。派手好みで,商売に熱心である。子供の行動には関心を持 つことが少なく,愛情の表現に乏しい。
- 姉 愛くるしい頼をしているが,言動は粗暴である。男友だちを含め大勢の仲間を家に連 れてくる。自動二輪車を乗り回している。A夫のめんどうを見ることは少ない。
- 本人 誕生後,物心がつくまで,スナックの中で育った。幼少時からおもちゃ屋から高価 なおもちゃを自由に持ち出して来たり,某菓子店の菓子類を自由に食べてもよいようにさ れていた。代金は,後から母親がまとめて支払っていた。欲しいものははとんど手に入れ ていた。
さびしがり屋で,夜具の中でよく泣いていた。保育所に入所後は,帰宅後就寝まで姉と二人だけの生活を送ってきた。
● 家庭の雰囲気
経済的に恵まれているが,家族成員の心理的な結びつきは非常に弱い。また,家族揃っての食事の機会がなく,食事の内容も偏っている。
両親不在のため,家は姉の友人等やA夫の仲間のたまり場になっている。
5.診断
両親の不適切な養育による耐性と意欲に欠ける自己中心、的な性格像に加えて,小学校生活に十分