研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -035/066page
指導体制 ― A男の場合 ―
職員会議で,診断,指導仮説,それぞれの指導体制が確認され,組織的な指導援助を開始した。
―校長の意思―
●全教職員に対して
生徒を常に肯定的にみよう。この生徒は絶望だ,どうしようもないなどと決して考えていけない。生徒の問題行動は教師の指導や人格が至らないせいだと時には考えよ。
ところで,この問題を通して私たちに問われているのは,単に生徒たちの反社会的行動を改善することのみではなく,彼等を含むすべての生徒を人間として成長させ,幸福な生活を保証する指導力を私たちが持つかどうかであると考える。そのために必要なのは,教師と生徒,生徒相互の人間関係を構築していく教師の力量である。
問題は深刻だが,教育的人間関係のあり方について全教職員が関心を高め,教師の人格でよい成果を残すことを期待する。
● A夫の両親に対して
私たちはA夫君をよくするために全力を尽くす。必ずよくすることを約束する。ただ,一つ条件をつける。父親はA夫君を殴るのをやめなさい。母親は子供の食事をきちんとつくりなさい。
(A夫の両親は校長にこれらのことを実行することを誓った。校長は他の3名の生徒の保護者とも面接し,それぞれの事情に合う具体的で達成可能な約束をとりつけた)
学年集会や学級指導など組織的な指導の主題や内容に特に工夫をこらし,指導は順調に進んでいった。A夫たちも教師集団の特に意を注いだ指導のもとに集周から受容され,学校生活に適応しているように思われた。
● 9・6
警察署から学校に「A夫が自転車を窃取したので補導した。タバコも持っていた」との連格が入った。
校長の判断で,学校でさらに力を尽くして指導することにし,警察署にその要望を述べ身柄をもらい受けて来た。協議し,学年主任がカウンセラーとしてカウンセリングにあたることになった。