研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -036/066page

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● 9・7

A 夫(以下「A」とする)「夜,自転車であちこち走り回るので父が自転車を処分しました。どうしても欲しいのでついやってしまいました」
年主任(以下「学」とする)「正義に反する行為は絶対にいけない。それにしてもずい分顔色が悪い。夜ふかしとタバコのせいだろう」
A 「(かなりの沈黙の後,認める)タバコはくせになっていてどうしてもやめられません」
「やめたいと思うか」
A 「(長い沈黙)はい」
「やめる方法がある。やってみるか」
A 「(沈黙)やってみます」
「本当にやるのか。しかし大変だよ。仲間が吸っていて自分だけ吸わないでいられるか。つら いぞ」
A 「(かなりの間をおいて)先生方に迷惑ばっかしかけています。タバコをやめます。先生,みんなも助けてやって下さい」

 A夫は学年主任に1週間ごとに喫煙本数を減少 させる目標を定め,6週間後に完全に断煙することを約束した。学年主任は他の3名の生徒にも同様の働きかけをし,彼等の自発性を尊重しながら, 行動療法により断煙する誓いをさせた。

8.指導仮説 その2

 断煙のために行動療法(形成化法)を採用する。 生徒の自発的なコントラクト(契約)であるので, これによって断煙が果たされるであろう。

 また,教師集団の役割分担による人間味溢れる 適切な指導により生徒の学習意欲が格段に向上し た。これは教師集団とA夫たちとの信頼関係が成立し,最も根本にあった愛情と承認欲求の問題が 解決されつつあるからである。そして所属する集 団内でのトラブルもほとんどなくなっている。し たがって,断煙が果たせれば,他の問題行動も必ず改善されていくであろう。

 断煙のための行動療法は,一時的にせよ教師が中学生に喫煙を認めることになるが,これは学年 主任に限ってのこととする。他の教師は組織的に 禁煙指導にあたる。内と外との二面的な指導によ つて,より効果的な指導となるであろう。

9.指導援助の経過

● 9・14

生徒指導主事と養護教諭による禁煙指導

 「煙草と健康」(16mmフィルム・警察署から借用)の映写をし,タバコの害について十分に納得させた。

● 9・24

第1回目の喫煙表

月日等 9/10から16

の喫煙本数

9/17〜23

の目標本数

9・17 9・18 9・19 9・20 9・21 9・22 9・23
氏名
A 夫 112 80 18 18 16 18 15 15 16 118
B 彦 93 60 10 13 13 16 13 13 16 94
C 郎 86 50 12 13 14 10 10 10 14 85
D 幸 46 30 9 5 8 7 7 7 7 51

 

「どれどれ。おや減っていないがどうした。説明しなさい。(かなりの間)説明できないのか。 約束事はどうなった。一週間,私はお前たちのことを信じていた。(大声で)裏切られた気持 ちだな。約束して信じていた方の気持ちを考えたことがあるのか。お前たちは自分の良心に恥 じないのか。(痛恨の口調で)私はお前たちを信じていたんだぞ。(間)今度破ったら許さん ぞ。(かなりの間)本気でやる気があるのか。(間)今度こそ本気でやるんだぞ。私は心から信じている」
  (学年主任は自分の真実の気持ちを4人の生徒に全身で打ちつけた。初めての怒りの表現でもあ った。4人は首をうなだれ体を震わせていた。しばらくして,4人は顔を上げすがるようにして学年主任を見つめた。 それは教師の指導を素直に受け入れるというシグナルであった)

● 9・28

 警察官による禁煙指導(自転車窃取の取り調べ 時に,学校から依頼した)

 ・両親に対して

 「未成年者喫煙禁止法」により,子供の喫煙は


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