研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -055/066page
度を見て学習してしまい,遊興的な関心を強める。その金はしさに小遣いばかりで足りずに,ひいては恐喝にまで及んでしまう。
特に,父親の規範が欠如していることが多い。子供の小さい過ちを,それぐらいのことと見過ごしたり,甘やかしてしまう規範の無さが,子供に小さい時から規範,特に正,不正の規範を身につけさせることができず,心にブレーキをかけることができない原因となっている。
また,親は子供がいつ,どこで,何をしているかがわかっていないことが多い。子供が夕方遅くなっても無頓着であったり,夜間徘徊,金の持ち出しがあってもわからないなど,子供が遊びぐせを覚えてしまっていく過程が理解できない。
(4)本人の問題
金銭を目的にした恐喝は,一般には小道銭欲しさ,遊びたいという遊興心が前面に出ている。さらに,集団的には同行為への同調,付和雷同などの心理も働く。また,自己顕示,自己誇示をしたい気持ちが働いて同行為をすることもある。
金品の貸し借りに対するルーズさがみられる。特に,金品を借りたら必ず返す,貸したら必ず返してもらうことを小さい時から親の態度に学ぶことがなかったり,逆に親のルーズさを学んでしまっていることが多い。
加害者になる子供の中には,家庭内でも,学校でも,日常的に人間らしく認めてもらえるような経験が乏しかったり,無かったりすることが多い。人間らしいことばかけやふれあい,授業の中での存在感への飢えた心の満たされない気持ちが同行為へと走らせていることが多い。
3.対処のしかた
(1) 加害者,被害者とも,知らないふり,黙秘,しらを切ることなどが多いので,事実関係については,当事者以外などからの確たる証言を基に,当事者に事実確認をする。
特に,被害者は,二次的被害を恐れてなかなか話さないことが多いので,教師は何があっても被害者を守り通す守護者であることを十分に伝えて理解させる。(2) 次に,当事者から同行為にいたる過程,背景などについて調査し,資料を整える。
(3) 小学生などの場合は,親を同伴させたうえで今後のことについて同行為などをやらない約束や厳しい説諭をする。親に対しては,同行為にいたる過程や背景などについて理解させ,以後の援助に十分力を注ぐよう指導する。
(4) 加害者の子供は,暴行,喫煙,不良交友などの問題行動を随伴していることが多いので,指導のねらいを的確にとらえて指導にあたる。
(5) また,他校生とか有職少年,場合によっては暴力団関係者などのグループとのつながりがあることもあるので,そのような場合は,その関係を断ち切る指導をする。
(6) 場合によっては,触法行為,犯罪行為として各種機関への指導援助の依頼,または連携した対応ができるようにする。そのうえで教育的な指導援助にあたる。
4.留意したいこと
(1) 事実確認などの場合,取り調べ的になったり追求するかたちになったりすることのないよう人権,人格を侵害しないよう慎重な配慮をする。
(2) 成長過程にある子供なので,将来のことを考えた指導援助ができるようにする。
(3) 恐喝は,犯罪行為(刑法第249条)にあたることとその判例などについて,具体的に指導しておくことが大切である。子供たちには,見つからなければ,わからなければという気持ちがどこかにあるので,そのことへ日常的に働きかけることも重要である。