研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -057/066page

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2.対処のしかた

 対処にあたっては,単に暴走や暴力など行為や行動のみを問題にするのではなく,背景にあるゆがんだ若者の心理を理解し,それに対して地域社会,学校,家庭がそれぞれの役割を自覚して対処していく必要がある。

 (1)家庭での対処

グラフ(昭和51年11月・科学警察研究所調査)

 家族は暴走という現実を的確に把握し単に反対するだけでなく,なぜ暴走という行為をするのか,その背景にある心理は何かを十分考えて対処する必要がある。何よりも本人をかかえこんで温かい雰囲気をつくることが対処するにあたっての大原則であることを知ってほしい。

 (2)学校での対処

 暴走行為だけを問題にすることなく,問題行動全体の中での位置を明らかにし,その中で暴走行為に独特の問題性を明確にして対処する必要がある。また,生徒相互に解決させる問題(ホームルームの時間などを利用して),教師と本人の間で解決すべき問題を分けて対処するのがよいと考える。その申でまずなすべきことは,規範性をいかにして身につけさせるかというテーマであろう。

 (3)地域社会での対処

 子供の問題を家族の問題や親の問題に帰するのではなく広く社会病理的な問題としてとらえる必要があり,その中で社会の構成員として一人一人の大人がいま何をなすべきかを考えることが大事である。ここでは暴走する若者を社会から切り捨てようとするのではなく,その若者は将来をになう一人の大切な人間としてみんなで育てるという発想に立つことであろう。

 F.性的問題

1.現状

 中学校や高等学校の一部の生徒には,教室で堂々とポルノ雑誌を回し読みすること,あたりをはばからずわい談をすること,避妊具を持ち歩くこと,自分の性体験を吹聴することなど,性の露骨化,無秩序化,享楽化傾向がみられる。これらのことがひいては学校の教育機能を犯している

 また,近年の性的問題の状況は潜在的に増加の傾向にあり実態はかなりの暗数があると推定されている。さらに,女子の補導された比率が年々増加していることと低年齢化の傾向がみられることが特徴である。

 性的間遠は子供の健全育成を阻みつつあるのが現状である。

2.原因

 思春期前または,思春期の子供は肉体的に急激な成長をすると同時に第二次性徴が発現してくる。このような急激な身体の変化する時期は,それと関連して心の変化も著しい。その一つとして,性的な関心が急に高まってくる。すなわち性的な関心の急な高まりは,誰にでも見られることである。しかし,この時期に性的な関心を自分自身で,または周囲の者の援助により,適切に処理できない場合に性的問題が発生することが考えられる。適切に処理できない背景には,子供自身や家庭に間遠がみられる。性的問題を引き起こした子供に共通にみられる子供自身や家庭の問題の特徴を述ベる。

● 男子の特徴

 幼少時期から家庭生活の中で親から十分な愛情を享受した経験が少なく不満を抱いている。そのため情緒的に不安定をきたしていることが多い。また,正しい女性観を持っていない。

 不純異性交遊に走っている子供の特徴は,一般に,学業成績が悪く,対人関係にも不適応をきたしており,家庭や学校でも存在感がない。そのため生活が享楽的になっており,夜間外出,シンナ


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