研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -058/066page

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ー吸引,暴走行為などをしていることが多い。

 強姦や強制わいせつをした子供の特徴は精神的に未熟で意志薄弱,自制心が弱く衝動的傾向,その場の雰囲気や集団の意志に左右されやすい傾向がある。

 のぞき,下着盗みなどをした子供の特徴は表面的には問題が見られないが,内向的で疎外感孤立感を抱き同性や異性の友人も少ない。そのため適切な性の情報を友人から得ることができない。また,適切な方法で性の衝動を発散するすべを知らない。

● 女子の特徴

 家庭生活の中での愛情不足から,情緒不安定をきたしているのは男子の場合と同様である。また性知識のなさ,性モラルの低さ,性に対する開放的な考えなどがみられる。

 不純異性交遊に走っている子供の特徴は男子の場合と同じで,日常生活の関心が学業以外のものに向けられている。そのため夜間外出や家出,また,シンナー吸引,暴走行為などをしている男子との接触をしていることが多い。さらに,居心地の悪い家庭への反抗,母親への報復,父親との葛藤,父親不在(心理的にも)から男性性へのあこがれが背景にあることや強姦,強制わいせつにあい自暴自棄になっていることもある。売春などをしている子供の特徴の一つとして,売春を遊興費を得る手段として考えていることがある。

 一般に,女子の性的問題は被害者になっている場合が多い。

● 時と所をわきまえず性を表現する子供の特徴

 家庭が子供の安住の場でなく,子供が情緒的に不安定をきたしている。また,放任や拒否的など望ましくない養育をされており,しつけや社会的規範,特に性モラルが身についていない。さらに学業成績が不振で教師との人間関係にも不適応をきたしている。したがって,学校をストレス解消の場としていることが多い。

 なお,社会的に望ましくない性情報のはんらんが今日の性的問題に大きく関係している。

3.対処のしかた

 性的問題だけを取り上げた指導でなく,教育相談の手法にしたがって,子供の全体像を把握し,問題の核心をとらえた指導が基本となる。

● 子供に対して

 子供との信頼関係の上に立ち,性的問題の心理的背景をカウンセリングにより気づかせることが必要である。性行為がみられた場合,性行為の基盤は愛であることを説き,自分自身を含めた人間愛を育てるアプローチをしていくことが大切である。また,性知識がない場合や性モラルが低い場合は正しくそのことを教えなければならない。さらに,学業成績の不振が性的問題に間接的に結びついていることもあるので,それへの対応も考慮する必要がある。

 特に女子の場合には,性的問題がその後の人生に悪影響を汲ぼす傾向があることを十分に考慮した指導援助をしなければならない。しかも性的被害に合わないような日ごろの指導に力を入れておくことも大切である。

 なお,学校で周囲をはばからず性を表現していた場合は,一方的に禁止するのではなく,この時こそ性教育の適切な場ととらえて指導する。

● 家庭に対して

 家庭が子供のやすらぎの場になり,家庭全体に性モラルが高まる指導援助をする。なお,性的問題を起こした子供は人間失格という受け取り方を親にされないよう配慮する。

 学校では,小学校から系統的に性に関する倫理観,正しい男性観や女性観を身につけさせる教育が必要である。また,子供に有害な性情報を除く努力も大切である。

 なお,性的問題の解決には必要に応じて警察や医療機関などとの連携を考えていくことが大切である。


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