研究紀要第67号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -060/066page

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4.物質常用の心理

 物質常用に陥る心理機制は次のように考えるこ とができる。(柳田:科学朝日1970)

薬物依存及び乱用の精神薬理学的発現機序

 その第一段階は初期体験にあり,これが将来物質常用障害に発展するかどうかを決めるものであることがよくわかる。

 また,別な角度から,次の三つの群にわける試みもされている。

● nurotic type - 何らかの苦痛軽減のために物質常用する群
● anomic type - 流行的で好奇心から物質常用する群
● asocial type - 独りで,非社交的,逃避的,耽溺的に物質常用する群
          (加藤:現代精神医学大系)

一般にシンナー等を常用する心理的要因には,

などがあげられると思う。
その上に社会的要因として入手しやすさなどが加わるので,局所的に集団で発生することもある。

5.対処のしかた

 物質常用障害には多くの複雑な要因がからみ合つているので,まず薬物の種類,摂取の動機,場所,頻度,量,摂取時の状態,身体症状,抑制の程度,性格特性など本人の状況を明らかにすると共に,家族特に親の対応や物質常用に陥る前の状況など十分考慮して治療を開始しなければならない。

 特に,中毒症状などが明確なときは危機介入の原則にしたがうことが必要であり,時に入院も検討する必要があるが,いずれの場合も,本人の治療への動機づけを十分考えて対処することである。

6.留意したいこと

 発見のてがかりとしては,次の三点に留意する必要がある。

(1)身体的症状を発見する。
   やせて,やつれが目立つ,空腹感がなくなる,疲労感が高い,など

(2)心理的症状を発見する。
  集中力,持久力がなくなる,落ちつきがなくなる,無気力で行動も緩慢になる,など

(3)直接的な手がかりを発見する。
  使用した薬物の残りがある,使用した袋などがある,薬物のあとが衣服についている,口のまわりのただれやにおいに気づく,など

 発見したら,直ちに指導(治療)を開始することが大切であるが,現象面に目をうばわれ背景にある心性や問題の本質を見失わないようにすることが大切である。


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