研究紀要第68号 「学校経営改善に関する研究 第2・3年次」 -004/075page

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地域社会の実態等を十分に把握したうえで,学校の課題を明らかにして,設定されるものであると考えられるが,この場合,とかくおろそかにされがちなのは,児童生徒をとり巻く地域的状況の把握であり,ややもすると安易な日常の教育活動を通しての“感”にたよる場合がないとは言えないのが実状のようである。このことは,調査の結果からも言えることである。

例えば,「自校の問題点の把握」では小・中・高平均62%(N=550)の教師が“とらえ方はあいまいである”と答えており,「自校の学校課題の把握」も小・中・高平均74%(N=553)の教師が“課題のとらえ方はあまり適切でない”と回答している。

教育目標は,学校経営の指標であり,児童生徒が目指す目標であることを考えれぱ,その設定過程に,いささかの甘さも許されるものではないであろう。そのような意味あいから,教育目標設定にあたっては,学校と地域社会との連携を十分に図りながら,学校自体及び学校をとり巻く地域社会の実情を,適切な調査等により把握し,児童生徒に対する親や教師の願いを聞き入れながら,慎重な態度でのぞむことが必要であろう。

それにつけても,調査結果の中に「教育目標の検討」について,“検討の必要は認めるがのり気でない”と回答している教師が小・中・高平均46%(N=526)もいる現実をどう打開すればよいのか,教師の教育目標に対する意識の変革も含めて,今後の課題はあまりにも大きすぎると言わざるを得ない。

しかしここで,当面の問題として,教育目標設定にかかわる諸条件を,どのような方法で明らかにし,どのような過程で教育目標を設定するのかその考え方を明らかにする必要があろう。

 (2) 教育目標の学年・学級目標への具体化

各学校での教育目標の検討は,次年度へ向けて12月頃から始まるようであるが,手順としては,教育課程,その他の活動の実施状況の評価を,教育目標達成度という視点で行い,反省の結果をもとにして,次年度の教育目標そのものを改善するとか,重点目標を設定するとかして,そこから学年目標,さらに学級目標の設定が行われるようである。

ところで調査によると,「教育目標の学年・学級目標への具体化」では,“表現を少し変えて学年・学級の目標にしている”という回答が,小学校18%(N=313),中学校28%(N=138),高校43%(N=90)となっている。

これをみても,教育目標を学年・学級目標に具体化することの意味を,単に文言を変えて,児童生徒に理解しやすいようにするという程度にしか考えていない傾向が,かなり見られることがわかる。

教育目標を,学年・学級目標に具体化するには教育目標を,わが学年,わが学級の児童生徒に達成させるために,それぞれの個性や特徴を理解したうえで,達成可能な行動のめあてとして設定する必要があろう。その過程としては,まず教育目標(または重点目標)に含まれる価値や願いを正しく理解して,学年目標を設定し,それを学級の児童生徒の発達段階や実態を見つめて,到達の可能性をもった行動のめあてとして設定するということになろうが,その一般的過程を明らかにする必要があろう。

 (3) 教育課程の編成と教育目標の具体化

教育課程の編成の際,多くの場合,学習指導要領でねらう教科等の目標には留意するが,ややもすると,せっかく検討して設定した教育目標については忘れがちにならないであろうか。

このことについて調査によると,「教育課程の編成にあたって,各教科の目標に教育目標を関連づけているか」の設問に対して,“考えていない”という回答が,小・中平均5.6%(N=455),“少しは考えている”という回答が小学校54.6%(N=315),中学校67.1%(N=140)となっており,このことからも,教育課程編成上,教育目標が軽視されていることは明らかであると言えよう。

教育目標の具現は,教育課程の実施によって達成されていくものであるから,教育課程そのもの


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