研究紀要第68号 「学校経営改善に関する研究 第2・3年次」 -009/075page
IV 教 育 目 標 具 体 化 の 事 例
=小 学 校=
1 教育目標の検討過程について
(1) 問題点
教育目標の必要性については,大方の教師が認めているが,目標設定に関しての手順及び方法についての関心はあまり高くない。目標の設定にあたって,「自校の学校課題を把握したか」の設問に対し,「実態に即して適切である」と回答したのは,約28%(N=308)と低く,「教育目標について,どの程度検討したか」の設問に対しても,「十分検討した」と回答したのは,20%(N=314)で低い。また,「教育目標の検討について,先生方の受けとめかたはどうか」の設問に対しても,「検討の必要を認めるがのり気でない。」「検討の必要を感じていない」の合わせた回答は,約48%(N=308)である。
このような実情から考えると,現在の教育目標は,それぞれの学校の実態に即し,日々の教育活動に具体的に実現されているとは言いがたく,ややもすると,かざりもの的で名目にすぎない存在になりかねない状況にあると考えられる。
(2) 基本的な考え方
学校の教育目標の設定は,教師自らの実践をどのような価値の方向において位置づけるかという教育的意識の表われであると同時に,目標設定を通して,学校の主体性をよりいっそう確立し,学校の特色を生かした教育方針に基づく実践を可能にすることができる。
教育目標が学校のあらゆる教育活動の指針として働き,真に児童の生きるカとして具現されるためには,以上のような目標設定の意義を十分にとらえるとともに,目標設定の根拠を明らかにし,教師全体の理解と意識の統一を図る必要がある。そのためには,次に述べるような,教育目標設定のために必要な基本条件についての吟味と検討を適切に行わなければならないと考える。
1) 教育目標の構造的理解 教育目標がどのような過程を経て設定されどのような手順で教育活動の中に具体化されていくべきなのかを学校経営のP―D―Sの視点からとらえる。 2) 学校課題の把握 ア 教育における今日的課題を的確にとらえ,これを対比して自校の問題点を探る。 イ 学校・地域・児童生徒の実態を把握しアで摘出された点との関連を吟味する。 ウ 問題点を集約し重点化する。 エ 自校の課題を設定する。 3) 教育目標の設定 ア めざす児童・生徒像を設定する。 イ 具体的行動目標を設定する。 ウ 教育目標(本年度重点目標)を設定する。 教育目標が教育活動の中に具体的に実現されるためには,教師一人一人が教育目標を「実践の指標」として自覚している必要がある。したがって課題把握から設定までの過程に,全職員の主体的な参画が必要であり,教育目標を,学校経営のサイクルの中で円滑に機能させるため,教育目標の設定過程を学校経営のP―D―Sの循環過程の中にどう位置づけるかについて,共通理解にたって考えていくことが望まれる。
(3) 学校の教育目標検討の例
1) 今日的課題から見た自校の問題点の摘出