研究紀要第68号 「学校経営改善に関する研究 第2・3年次」 -050/075page
=中 学 校=
1. 教育目標の検討過程について
(1) 問題点
各学校には,学校独自の教育目標があり,教育目標の達成へ向けて,その具現化を図りながら,教育活動を続けているわけであるが,この教育目標と,その設定にかかわる諸問題についての教師の意識を調べた結果は次の通りである。
まず教育目標の必要感については,「大変必要である。と回答しているのが中学校で約77%(N=142)であり,「ある程度必要・あまり必要ない」と回答しているのが23%となっている。これが高校の場合は「なくともよい」2.2%を含めて44%にもなっている。
つぎに教育における今日的課題からみた自校の問題点の吟味の程度については,中学校で「適切にとらえている」が27%(N=140)にすぎず,小・中・高平均すると,わずかに約22%(N=550)になってしまう。また,教育目標を検討することの必要感については,「検討の必要は認めるが,のり気でない」が,中学校で42%「必要を感じない・無関心」が8.2%(N=137)高校では17%(N=81)にもなっている。
これらの結果から,教育目標の必要性や,年度末に教育活動を反省して,来年度へ向けて教育目標を更に検討することに対する意識は,かなり低いとみなされるし,具体的な吟味の過程でも,吟味の要素を適切にとらえていない場合が多いと考えられる。
(2) 基本的な考え方
各学校の教育目標は,関係法規や学習指導要領が示している教育目標が,普遍的,一般的であるのに対して,地域的であり具体的であることを,本質的性格としている。
したがって,学校の教育目標は,ある特定の地域で生まれ育ってきた生徒を見つめている教師や親の,「こんな子供に育ってほしい」という願いや期待が結実したものでなければならない。
このようなことから,教育目標の設定にあたっては,教育目標の国家的基準に,地域性というスポットを多角的にあてることにより,地域固有の立体的構造をもった目標として設定することが肝要であり,そのために必要な基本的条件の吟味と検討が,次のような点について行われなければならないと考える。
1) 教育目標の構造的理解を図りながら,現行の教育目標の課題をさぐる。 現行の教育目標が,どのような過程を経て設定され,どのような手順で教育活動の中に具体化されてきたかを,学校経営のP―D―Sの視点からとらえ,教育目標の課題を明らかにする。 2) 学校課題を再検討する。 ア 今日的課題からみた自校の問題点を明らかにする。 イ 地域及び生徒の実態を把握し,アの問題点との関連を吟味する。 ウ 問題点を集約し自校課題を明確にする。 3) 教育目標の設定 ア めざす生徒像を設定する。 イ 行動目標を設定する。 ウ 新しい教育目標や重点目標を設定する
(3) 教育目標の検討過程の例 1) 今日的課題の分析・検討をする。 ○ 教育改革の4つの視点について ○ 臨教審の教育改革に関する答申内容について (図―1(A),(B)参照) 2) 今日的課題に視点をおいて,生徒をとりまく諸問題を摘出する。 ○ 生徒像に対する教師の願い,地域住民の願いを集約する。 ○ 学校の実態,地域の実態については,調査の目的,内容,方法を明確にして実施す