研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -022/058page

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児童のそれぞれの個性,持ち味が生かされている場面を随時評価すべきであるという考えである。E子の場合は,スケッチすることに強い関心を示し,生き生きと取り組んでいる姿が見られる。自分の好きな学習活動による関心の高まりから,力を十分に発揮している状況がうかがわれる。これと反対のケースも予測されるが,指導者は児童のそれぞれの持ち味を伸ばせるような「手だて」をできるだけ多角的に講じておくことが望まれる。

・「情景を説明できる絵」を描く学習方法を取り入れた指導者の意図には次のような背景がある。昨年まで図画工作教育の研究指定を受け,児童たちは,熱心に取り組んできていた。絵を描くことに抵抗は少なく,むしろ楽しみに感じている児童たちである。学校教育の中で,すでに興味・関心が高められている絵を描くことを生かして,この学習の「手だて」として位置づけたのである。

作品の持つイメージ豊かな視覚的表現と児童の絵画に対する高い興味・関心を結びつけたところに,観察者全員十分達成(+)の評価につながるものがあったといえよう。

―― 検証授集III ――

評価目標 1
自分のスケッチした情景をもとに話し合いに参加しようとする。

評価方法:観察法(マイナス・チェック)
       自己評価法(多肢選択法,記述法)
評価基準
スケッチした情景を活用しようとせず,また話し合いに参加しようとしない。
○スケッチした情景とまったく関係ない話をしている。
○友だちの発表に対して,ハンド・サインによる意志表示をしない。

評価場面:調べる段階
前時にスケッチした情景について,予定していた発表者の発表をスケッチ係がOHPにまとめ,それをもとに「つけ加え」,「修正」の話し合いをする場面。

[1]  評価の位置づけ

前時に,全児童が「情景を説明できる絵」を描いている。児童の内面に育てられた作品のイメージを具体的に絵に表すことによって定着させたのである。それは同時に,初発のスケッチ(検証授業II 評価目標2)と対比して,認知,技能面の変容を確認することにつながる。

文学的文章教材においては児童一人一人のイメージが大切である。しかし,学習段階において一つの作品を理解し,イメージを描く場合には,ある程度の共通理解が必要である。

この「つけ加え」,「修正」の場面では多くの児童の活発な発表活動から葛藤場面をつくり,話し合いをさせる。その中で,共感を得たイメージを2台のOHPのスクリーンに表現させるのである。自分のイメージをもとに,他の児童と比べ合いながら,新しい一つのイメージをふくらませることは,認知,情意面ともにきわめて重要な学習過程と考えられる。

また,理解の裏づけを持ち,効果的に発表しようとする学習活動は,国語科の「表現」領域においては重要なものである。

[2]  評価の実際と結果

授業での評価場面は実際には次の通りである。

ア 「五月」と「十二月」の絵ができましたが,ほかにつけ加えたり,修正するところはありませんか。
 ○光・色・音についてはどうですか。
 ○時間・季節についてはどうですか。
   (以下略,指導案参照)
イ 今までにでたほかに,つけ加えることはありませんか。

・指導者は達成不十分(−)と思われる児童にマイナス・チェックしたが該当者はなかった。OHPにつくりだされる情景に全員が関心を示し,話し


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