研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -027/058page
少数ではあるが,「わからなかった」,「とりくめなかった」と表現している児童がいる。その原因を追求して,次の授業に生かしていくことが大切であろう。
興味・関心を高めるための「手だて」として考えたOHPの使用について,No.16の児童の場合は<表8>のような表現をしていることに着目しなければならない。
なお,No.17の児童は遅刻者で終了時間10分前に入室したので,今回の資料としては割愛すべきものと判断した。また,No.32の児童の感想は観点が違うので省略する。
[3] 考察
・「多肢選択法による反省」の中のオの項目で「できなかった」という児童が一人いた。この児童は記述法では次のように記している。
授業でいいできじゃなかったのでよくやりたいと思う。
オの項目の場面について「いいできじゃなかった」と認知面の反省をしているが,一方,「よくやりたいと思う」と情意面では意欲的な表現をしている。しかも,ア,イの授業全体についての項目では,「だいたいわかった,だいたいとりくんだ」を選んでおり,授業に取り組む意欲が低くないことを示している。この児童は抽出児童ではなかったので,観察法による記録はないが,観察法では気がつかず評価できない部分であろう。AおよびBの自己評価法を組み合わせることにより評価を可能にした例である。
・「記述法による反省」においては,67.5%の児童が情意領域の興味・関心の高まりを表現しており,また,92.5%の児童が認知・技能,情意を含めた高まりを表現している。このことは「手だて」として準備した「スケッチ」とOHPの使用が,興味・関心を高めるものとして効果的であったことを示していると考えてよいだろう。
しかし,No.16の児童は,OHPの使用について次のように述べている。
OHPを使って授業をしたので,2台もだからOHPの方ばかり気になってあまりとりくまれなかった。
このことは,授業への集中力を阻害したという感想であり,同じことが観察者の中にもみられる。
指摘のように,理解を助け,情意を高めるための「手だて」が,状況によって,また個人によってはマイナスに働く場合が生じてくることがある。指導者は,こうした状況を常に的確に把握しておかなければならない。いずれにせよ,全体的には今回のOHP使用は,児童の興味・関心を高めるのに役立つ有効な「手だて」であったと思われる。それは,次のような表現にはっきりあらわれている。
○今までにない楽しい授業ができた。
○いつもよりよく勉強にとりくめました。
○みんなしんけんに勉強にとりくんだようだった。