研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -030/058page
[1] 評価の位置づけ
今回の研究における検証授業は,単位時間内における「関心・態度」の評価を中心に進めてきた。これは,当センターで進めている継続研究の一環として位置づけられているからである。ところが,昨年度の研究の反省として,中・長期的な面における「関心・態度」の評価の必要性が説かれ,今年度は計画の段階から「単元における評価」を加えてスタートした。
国語科では,1単元について情意面を高める指導過程を作成し,児童の「関心・態度」を高める「手だて」を講じながら,その変容をとらえようと試みてきた。
[2] 評価の実際と結果
・単元における情意面を高める指導計画
ア 児童の「興味・関心」を高めるための具体的な「手だて」を講ずる。(やまなしの実物提示, かわせみの模写,OHPの使用など) イ 指導過程の中に「情景を説明できる絵を描く」活動を設定し,作品の情景をイメージ豊かにス ケッチさせる。 ウ 初発の感想文と学習終了後の感想文を書かせ,理解の確認とともに情意面の変容をとらえる。 エ 授業ごとの反省を児童に書かせ,次時の指導に生かすとともに,情意面の変容をとらえる。
・E子の場合
E子は,前掲の<表10>の「反省カードの記録」に見られるように指導者の指導に素直に反応を示す児童である。また,この児童は「検証授業II・評価目標2」で観察者が記録しているように,絵を描く場面では生き生きしてくる児童でもある。そのことが,1時限「絵をかいたところがよかった。」,2時限「スケッチとかをかく時間もあってよかった。」という情意の表現になって表れている。E子にとって,スケッチを「手だて」とした授業の展開は「興味・関心」の高まるものとなっているのである。3時限以降も――線部のように,指導者の「手だて」に素直に反応し,関心が高められていく様子がうかがわれる。10時限になると「(朗読していると)なぜか本の中にひきずりこまれそうな気がします。」,「読んでいるととっても楽しい。」と表現している。この表現は,次時の感想文にそのままつながり,「わたしも,やまなしをコップの中にいれて,二日三日待ってみて,ほんとうにおいしいお酒ができるか,やってみたいです。」,「ほんとうに水の中がそんなにきれいだったら水にもぐってみたいです。」などの情意面の高まりを示すことばになっていく。
感想文を書いた11時限の反省には,「宮沢賢治のほかのきれいな作品が読みたい。」という表現をしている。これは情意面の発展的な高まりの表現といえるものである。[3] 考察
・「指導と評価の一体性」とは児童を高めるためのものである。児童を高めるためには,指導の中に有効な「手だて」が講じられなければならない。指導過程で適切な学習方法を考え,それに合った指導の「手だて」が有効に働くとき,児童は高められるのである。「やまなし」においては,その点を考慮して,情意面を高める指導計画を作成した。E子については,<表1>や「評価の実際と結果」から「手だて」が有効に働いたといえる。
・6学年における「関心・態度」の「理解」分野の達成目標は次の通りである。
目的に応じて必要な本を選び,生活や学習に役立てる。
E子の11時限の「宮沢賢治のほかのきれいな作品を読みたい。」という表現は,この6学年の達成目標にかなり近いものである。E子のこの表現が実践され,生活の中に自然に溶けこむときに,6学年の目標は「十分達成(+)」ということになっていく。このように考えてくると,単元でとらえた情意面の高まりは,そのまま指導要録の観点別評価の評価基準につながっていくといえよう。