研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -038/058page
(1) 「関心・態度」の階層性の把握
この研究では,「関心・態度」の目標を考える際に,ブルームらの先行研究があるのでこれを参考にした。それをまとめると<表1>のようになる。
<表1> ブルームらの情意領域の体系
段階 内容 1 受容 感知,積極的受容,注意の集中,選択 2 反応 反応の黙認,自発的反応,反応の満足 3 価値付け 価値の承認,価値の選択,価値への傾倒 4 価値の体制化 価値の概念化,価値体系の体制化 5 人格化 一般化された構え,人格化 これらの先行研究によると情意領域の目標構造を低次の「感知」などの前提的目標から,漸次高次の発展的な目標に至る一つの階層的連続体としてとらえている。しかし,これらの目標分類は,人間の生涯を通じての全人格的なとらえ方であり,そのまま教育目標にあてはめることは不適当であろう。
そこで,本研究では次の視点から「関心・態度」の教育目標を設定することにした。
学校教育の範囲で出現すると考えられる生徒の情意は,ブルームらの目標分類で判断するとせいぜい「価値付け」までであろうから,「関心・態度」の教育目標の階層は,出現する行動特性に応じて次のように設定した。
[1] 「受容」の段階のうち,「感知」などの低レベルの「関心・態度」は,学習活動以前の前提的な目標とし,「興味」の段階とする。
[2] 学習活動における「関心・態度」は,導入部から課題を解決しようとして何らかの形で反応し,終末部で課題を解決した満足感を味わう段階までの一連の流れとして表れるものである。ここで,課題に対する反応の表れ方を考えてみると,受容的な反応の仕方と自発的・積極的な反応の仕方がある。そこで,課題に対して注意を向ける段階から受容的な反応の部分までを「関心」の段階とする。
[3] 学習活動における望ましい反応の表れ方は,自発的・積極的な反応であり,受容的な反応とは明らかに区別する必要がある。このような「関心・態度」の表れの部分を「積極的態度」の段階とする。
[4] 毎時間,学習課題に自発的に反応し,学習結果に対する満足感が積み重ねられた生徒は,学習内容の価値を認識し,習慣的に追求しようとする態度が表れてくるので「習慣化」の段階とする。以上の視点で「関心・態度」の階層を把握し,そこに体育分野における「関心・態度」の趣旨の内容を対応させたのが次頁の<表2>である。ただし,体育分野の「関心・態度」の内容には運動に直接かかわる分野と,実施する際に当然配慮しなければならない健康・安全にかかわる部分があるが,ここでは運動に直接かかわる部分についてのみ述べていくことにする。
(2) 学習内容と「関心・態度」の関連づけ
体育学習の内容は,運動することそのものであるから,「関心・態度」の達成目標を設定するに当たっては,運動の特性と関連づけなければならない。<表2>を基に,運動の特性ごとの「関心・態度」を分析したのが<表3>である。
(3) 認知面・技能面の目標との関連づけ
達成目標は,さらに各単元ごとに分析され,毎時間,それに基づいて指導や評価が行われる必要がある。<表3>を基にして器械運動の単元における「関心・態度」の目標を分析し,それと認知面・技能面の目標を関連づけたものが<表4>である。実際の学習は各種目ごとに行われるのであるから,<表4>を各種目ごとの内容に置き換えて「関心・態度」の指導や評価に当たらなければならない。