研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -053/058page

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9 まとめ

検証授業を通して次のことが明らかにされた。

(1) 評価基準について

基準を3段階(+),( 0 ),(−)に設定する際,特に( 0 )の基準についてむずかしい面があったが,3段階に基準を設定したことは,観察者が生徒の変容〔(−)→( 0 )〕,(−)→( 0 )→(+)〕の状況を的確にとらえることができたという点で効果的であった。しかし,基準のなかには該当しなかったり,一人の生徒で(+),( 0 ),(−)のすべてに該当したということがあったので基準をさらに整理する必要がある。

(2) 評価用具について

技のチェック・カードは,自己の能力の把握,挑戦する技の選択に大いに役立った。 しかし,チェック・カードにあげた技のバリエーションが多すぎたきらいもあり精選 する必要がある。
学習カードは,課題確認,反省の際,有効に機能していた。しかし,練習場面での 利用のしすぎは,カードに気をうばわれてしまって,練習しない状況につながるので, 使用目的を明確にする必要がある。
学習カードによる自己評価については,慣れてくると形式的になるきらいがあるの で,使用目的を明確にする必要がある。

(3) 評価方法について

班別学習,ペア学習における観察法は,指導者一人で評価基準に基づいて評価しようとするとかなりの困難があった。学習効果を上げるために,生徒側には学習訓練,指導者側には指導の工夫が必要である。

(4) フィードバックについて

評価をして適切な時期と内容のフィードバックにより生徒の評価に(−)→( 0 ), (−)→( 0 )→(+)という変容が見られた。
内容が班全体に必要なのか,個人に必要なのかの区別を適切にする必要がある。
内容は,具体的には認知・技能面が中心であったが,これにより情意面の高まりに結びついた。

(5) ペア学習,班別学習について

有能な班長がリードしていた班は活動の活発化につながっている。
相性の悪いペアの場合,意欲の低下が見られた。

(6) 課題克服と情意面のつながりについて

新しい技を習得する過程,新しい技を完成する過程がマット運動の克服場面と考え ることができる。この場面で意欲が高まったのは,課題を正確に把握していた生徒であった。
生徒が自ら指導者にアドバイスを求めたり,ペアの相手に補助を求めたりする姿勢 が見られた。これは,問題意識をもち解決するための手だてを生徒自ら工夫した結果 の行動ととらえることができる。
課題把握の際,自己の能力で克服可能かどうかという見通しをもつことが,情意面 の高まりを促す重要なポイントである。

10 おわりに

本研究では,個人的スポーツであるマット運動を通して「関心・態度」の評価を試みた。体育科では,運動の特性に応じた楽しさを味わわせることとの関連から情意面の評価の重要性がクローズアップされている。

検証授業では,マット運動の特性である克服場面における生徒の情意面をとらえることができたと思われる。授業において生徒一人一人が運動の特性に触れることができる場をつくりだすために,指導者は認知・技能面の学力とともに情意面の学力である「関心・態度」を指導過程の中で強調する必要がある。このことが生徒の個性を尊重した指導につながると考えられる。

今後,情意面の評価は毎時間の授業の中に,より適切に位置づけられる必要があると思われる。本研究で行った目標分析表や評価基準などを参考にし,各教育現場で独自のものを作成していただければ幸いである。


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