研究紀要第69号 「『関心・態度』の評価に関する研究 III」 -054/058page

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授業者の感想

「関心・態度」の評価に関する研究の検証授業に取り組んで

福島市立北信中学校教諭  根本 眞

「楽しい体育」が主張されて以来,私も生徒一人一人に運動の楽しさを味わわせることができるよう,学習指導に工夫を加えてきたつもりであるが,今回,研究協力校の一員として授業を行うことになり,楽しい体育の在り方について,さらに考えを深める機会を得た。
あらためて言うまでもなく,体育の授業では,運動技能や知識のみならず,行い方やマナーなど運動の楽しみ方や態度を指導することが重要視されている。すなわち,運動そのものが持つ楽しさや喜びを味わわせることによって,「運動に対する関心・態度」を高めて,現在及び将来にわたって運動を積極的に実践する能力や態度を育成することをねらっているのである。しかし,今までの授業を振り返ってみると,「関心・態度」の指導や評価の重要性は認識していたが,その評価方法や評価基準がよく分からず,主観的な観察評価に頼っていたのが事実であった。
そこで,今回の研究に協カして感じた点について,次に述べてみたい。

第一に,生徒をよく知ろうと努力するようになったことがあげられる。
日頃,実技指導をしていると,生徒の技能の巧拙だけが目につき,技能や知識の有無で「やる気のある生徒」,「やる気のない生徒」ときめつけてしまうことが往々にしてあった。このように,生徒の情意面に対する配慮が足りなかったため,技能が低くても能力に応じて全力で運動に取り組んでいる「関心・態度」の高い生徒を見逃してしまい,そのような生徒たちに挫折感を味わわせていた。今回,「関心・態度」を意識した授業を実施してみた結果,一人一人の生徒をより真剣にとらえ,つまずきのある生徒に対して,意図的に手だてを講じてやることができ,あらためて生徒一人一人の内面的理解の重要性を認識した。

第二は,「関心・態度」を評価するためには,指導目標を綿密に分析し,評価項目の具体化,評価基準の設定など,教材研究をより一層深めることが必要であることを教えられたことである。
学習の主体者は生徒であるから,生徒の学習活動を活発にするためには,生徒が今何を考え,何を要求しているのかなど,生徒の立場から運動の特性をとらえ,一人一人の能力に応じた目標を設定する必要がある。つまり,運動の特性としての楽しさと生徒の運動に対する意識には,一般的にズレがみられ,課題によっては,積極的な活動意欲は生まれないことがあるからである。
また,生徒が興味を持って意欲的に取り組み,能力を精一杯出し切り,しかも,成就感を味わうことができるような学習の場を設定することも大切である。学習の場を工夫すれば,生徒は自ら意欲的に学習に取り組み,自己の課題解決に向かって,全力を出し切るものである。

第三は,何回か検証授業を進める中での最大の収獲は,私自身の授業に取り組む姿勢が変化したことである。
生徒の主体的な学習活動を支える場の設定のしかたや,自己評価・相互評価のさせ方,学習カード等,今まで自分がおろそかにしていた学習指導充実のための手だてに対して,ひとつひとつ配慮するようになった。そして,教師が学習指導に対する「関心・態度」を高め,意欲的に実践することが,生徒一人一人に運動の楽しさをより一層味わわせることにつながることを痛感した。今後,教材研究をさらに深め,「関心・態度」を高める授業の展開のため努力していきたい。
最後に,教育センターの所長先生はじめ,諸先生方の温かい身に余るご指導に対し,心から感謝申し上げ,授業者の感想としたい。


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