研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -002/071page

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2.非社会的行動の把握

(1)非社会的行動に関する基本的な考え方

 児童生徒の問題となる行動は、主として不安によって生じる社会的に問題となる行動といえる。問題になる行動を社会的観点から分類すると、反社会的行動と非社会的行動とに区分できる。

 本研究では、非社会的行動を子どもの社会性を基盤として考えてみたい。

○ 子どもの社会性

 人間の一般的な行動様式は、社会生活の中に共通するものであり、容認されている。すなわち、社会性とは、この一般的な行動様式で、社会に適応する行動の全般としてとらえることができる。
 このことから、児童生徒の場合の社会性とは、主に、学校という集団の中における適応行動の全般といえる。
 すなわち、社会性に欠ける行動とは、集団への不適応行動のことである。児童生徒の不適応行動とは、学校という社会環境への不適応であり、学校場面における強い不安を解消するための行動とも考えることができる。

○ 非社会的行動と反社会的行動

 心に生じた強い不安の解決に失敗した場合、次の三つの方向をたどる。
 それは、主観的に苦悩して体験すること(体験化)、身体症状に表現すること(身体化)、行動上に表現すること(行動化)である。
 なお、これらの症状が重複して現れる場合がある。
 このうち、社会(特に児童生徒の場合は学校集団)から離れて自分だけの内に閉じこもろうとする行為や行動の形態をとった場合は、非社会的行動という。これとは逆に、周囲の人々や環境に対して社会の規範や慣行等に背反する行為や行動の形態をとった場合は、反社会的行動という。

(2)非社会的行動の種類とその内容

 ここでは、本研究で取り上げた事例にかかわりのあるものを中心に述べるが、このほか、孤独、内気、小心、はにかみ、無気力、自信喪失、自昼夢などがある。

 なお、( )内は関連の深い病名である。

<不登校―登校拒否―>

 児童生徒が何らかの心理的要因によって登校できない、あるいはしないこと。その指導援助にあたっては、特に心理的側面へのアプローチを重視する必要がある様態のことである。
 なお、身体疾患、外傷、経済的事由、怠学、精神病、明らかな神経症などによる欠席は不登校から除く。

<集団不適応>

 ア.乱暴したり、勝手気ままな振る舞いなどをして集団をかき乱す、イ.引っ込み思案、不安、動作緩慢などで集団に入れず孤立する、ウ.ある特定の集団活動の場面を嫌って集団から逃避するなど三つの場合があるが、特にイ、ウなどの場合が非社会的行動とみなされる。

<かん黙(選択性かん黙)>

 正常な言語能力を持ちながら話さない様態である。特定の場所や人物に対してのみ話さない選択性かん黙(場面かん黙)とあらゆる場面で語さない全かん黙とがある。
 例えば、家族とは普通の会話をするが、学校ではだれとも話さないとか、学校では特定の友人とだけ話をするなどは選択性かん黙である。

<強迫的観念や行為(強迫神経症)>

 ある考えや衝動が、自分は望まないのに絶えず繰り返し頭に浮かび、無意味であることは分かっていながら振り払うことができず、そのため不安や


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