研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -007/071page
夏休みに、いとこたちが長期間滞在した。その間いとこたちとだけ楽しく遊んだため、今までの仲良しグループとの関係が希薄になった。また、遊びに夢中になってしまい夏休みの宿題を未完成のまま二学期を迎えることになった。このようなことは、A男にとって初めてのことであり登校に対して大きな不安を引き起こすものとなった。そのため、母親にまつわりつくことでその不安を解消しようとした。しかし、その気持ちを理解されず拒否的に扱われたため、ついには、学校に行かないということで心の安定を保とうとした。
この不安定な気持ちの背景には、祖父母のA男に対する「良い子」でなければならないという心理的な抑圧と、両親のA男に対するかかわりが少なかったことがあるものと考えられる。6.指導仮説
祖父母や両親の養育態度の改善が図られ、A男の情緒が安定すること。また、今までの友人関係が成立することになれば、問題行動は改善されるものと考えられる。(1)家庭では、
1 A男に対し、当面は登校刺激を与えない。
2 母親は、A男の気持ちを十分に理解し受け入れるように対応する。
3 祖父母は「良い子」「良い成績の子」であるというようなことをA男に対して言わない。また、祖父母中心の養育から両親中心の養育に切りかえる。
4 情緒が安定した時点において登校プログラムをA男と共に両親が作成し、段階的な登校を試みる。
(2)学校では、
5 当教育相談部と連携をとりながら、全職員の共通理解を図り、指導援助の体制作りをする。
6 当面、学校では、A男に対して登校を強制しない。
7 家庭訪問により、担任と家庭やA男との結びつきを強め、情緒の安定を図り信頼感を強める。
8 「登校プログラム」の計画や方法について家族やA男に指導をする。
9 A男の交友関係を深める援助をする。
7.指導援助の経過
(指導仮説と対応させながら述べる)● 指導体制と役割 5
校長:指導指針、全体掌握、両親への指導
教頭と生徒指導主事(担任):指導計画樹立
教頭:スーパーバイザー的役割、当教育相談部との連絡
担任:A男や家族への直接的アプローチ
職員:登校プログラム実行への援助
● 不登校の気持ちの理解、登校刺激の軽減1 2 6
学校では、不登校についての理解が全職員で図られた。
家庭では、不登校になったA男の気持ちを理解できるようになった。この結果、学習用具を隠し、自室にこもり家族と共に朝食もとれなかったA男が、徐々に学校や勉強の話をするようになった。● 母親の対応 2
母親が一緒に入浴をしたり、つめ切りをしたりするなどスキンシップを多くし、A男の甘えを受け入れた。母親からの話しかけを多くし協働の場面を意識して作った。また、家族の者がそれらを支持する雰囲気を作るよう努力をした。その結果、A男の表情が明るくなり家事手伝い等をするようになった。● 家庭訪問 7
初めは、不登校の理由を知る目的で家庭訪問をした。しかし、A男は姿を隠し会うことができな