研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -008/071page
かった。そのため、「担任と一緒に登校しないか」と手紙によりたずねた。A男から「登校はしない。朝は迎えに来ないで欲しい。」と手紙で返事があった。登校を誘わないという条件で、できる限りほとんど毎日通勤途中、家庭訪問を継続した。直接A男との面談はできなかったが、次第に手紙による会話は成立した。担任からは、学級の友達の様子や出来事を知らせ、A男からは、祖母の手伝いをしたこと、母親との接触の様子等の日常的なことがらの返信があった。その後、担任と会えるようになってきた。
● 両親の養育態度 3 4
当初、担任が家庭訪問しても両親の参加は得られなかった。特に、父親は、第三者のような態度をとっていた。しかし、登校プログラムを作成する頃より、両親の態度が積極的になってきた。
父親が「登校プログラムの方法により、たとえ失敗することがあっても、それは、だれの責任でもない。とにかく今は、家族の考えがばらばらではいけない。同じ考えにまとまって実行することだ。」と話した。また、母親は「登校プログラムによる登校の付き添いをしたい。」と申し出た。両親がともに、積極的な意見や発言をし今までにない両親の真剣な態度が感じられた。
学校では、A男のために全力を尽すこと、必ず登校できるようにすることを両親に約束をした。その後、父親が来校し、子どもの問題について助言を受けるようになってきた。● 登校プログラム作成の指導 4 8
母親とA男の心理的結びつきが十分図られ、A男の情緒が安定し、登校への意欲のきざしがみえた段階で、両親がA男に登校プログラムの作成をすすめるよう指導し、登校プログラム作成の動機づけがなされた後、次のように実施した。〔登校プログラム(第1回)〕
やくそくのよてい
(以下省略)
月・日・曜日 どこまで行くか だれと行くか 守れたしるし 9 11 水 ゆうびん局のかど お父さんと車で ○ 9 12 木 〃 〃 ○ 9 13 金 〃 〃 × 9 14 土 〃 〃 × <プログラム作成及び実施上留意したこと>
<登校プログラム第1回の結果>
- A男の気持ちや考えを尊重し強制をしない。
- どこまで行くか目標を小さなステップで、実行可能なものにする。
- 計画を忠実に実行し、A男が希望しても、それ以上のステップに挑戦させない。
- できなかった場合、決してあせらず、できるステップに戻り、そこからやり直す。
父親と車で郵便局の角まで行く。守れたしるしの欄に、自分でシールをはるなど、登校の意欲を見せた。しかし実行は、2日間のみであった。だが、A男の気持ちを大事にし、決して無理強いをさせなかった。その後、新たな計画を立てた。
〔登校プログラム(第2回)〕……(省略)〔登校プログラム(第3回)〕
途中、友達の登校する姿を見つけ、車の座席に体を伏せ隠れた。そのため登校時刻を早めた。
10 14 月 しょうこう口まで お母さんと車で ○ 10 15 火 〃 〃 ○ 10 16 水 しょく員室ろう下まで 〃 ○ 10 17 木 〃 〃 ○ 10 18 金 1年教室ろう下まで 〃 ○ 10 19 土 〃 〃 ○ 〔登校プログラム(第4、5回)〕………(省略)
● 友人との交友 9
放課後や土曜日の午後、日曜日等には、友達を家に遊びに行かせた。初めは、近くの仲良しの子