研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -009/071page
どもを行かせ、徐々に顔ぶれや人数に変化をもたせていった。その結果、友達との手紙のやり取りや、A男が友人宅に遊びに行くようにもなった。
〔登校プログラム(第6、7、8回)〕1. 11月7日、初めて会議室に入る。付き添いの母親と読書をする。緊張の様子がみえるので、担任が母親とオセロゲームをし、自然な形でA男を誘った。次第にA男の緊張が解け、自由な発言がみられるようになった。
担任:そうすると、3個も白い玉取ってしまうよ
お母さん、いいかな?母:あっ、先生待って!!どうすればいいかな。
A男:(そばに寄ってきて見る)、お母さん、こうするといいよ。2. 11月8日、会議室での学習(母親同席)
1校時:国語男子2名と分担読み
2校時:社会男子1名と地図の記号調べ
3校時:図工男子全員と粘土で動物作り
4校時:図工女子全員も合流
給食を教室で食べ、母親と一緒に帰宅。3. 11月14日、母親と教室に入る。5校時まで学習。4校時以後母親帰宅。A男友達と徒歩で帰宅。
4. 11月22日、母親と教室に入る。徒歩で登校。5校時まで学習。2校時以後母親帰宅。5. 12月2日、集団登校による登校。平常の日課のとおり学習。友達と下校。
●登校プログラムに対する全職員の援助 5ことさらクラスの友達や先生方に挨拶をさせるなどの意図的な出会いをさせず、ごく自然な何気ない態度で接した。特にA男が登校できた段階で、全職員が対応に注意を払ったことが計画の実行をスムーズにさせた。
8.考察104日ぶりに、12月2日から平常どおり登校ができた。現在、欠席もなく学校生活を送っている。
以下は、考察の要点である。
- 診断、指導仮説が適切であったこと。
- 学級担任の家庭訪問の継続が、A男や家族との信頼関係を深め、その対応が支持されたこと。
- 教頭をとおして、専門機関との連携が図られ適切な心理療法がなされたこと。
- 全職員共通理解のもとに、指導体制を整え、熱意をもって計画的に指導援助を進めたこと。
- 家族に対し、「A男を必ず登校できるよう全力を尽す。」と約束をし、家族の心の安定を図ったこと。
- A男の養育について、家族の者の共通理解が図られ、特に祖父母が「良い子」でなければならないという考えにとらわれずに接するようになったこと。
- 母親の登校に対する積極的なかかわりが、A男の情緒を安定させ、対人関係を広げ深めさせたこと。