研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -010/071page
事例 2
両親への不信から陥った不登校を克服した高校生の事例
1.主訴 不登校
2.対象 高等学校1年 男子
3.問題の概要中学2、3年のころもそれぞれ20日程度の欠席をした。また、しばしば登校をしぶったことがあった。しかし、この時は欠席の状態も断続的であり、両親が叱咤(しった)激励すると登校したことから、家庭及び学校でもあまり問題視していなかった。
高校入学後の1学期間はこのような傾向が見られなかった。が、夏休み明けから、腹痛や気分の悪さを訴えて遅刻や早退が目立つようになり、欠席もたびたびするようになった。また、授業中、ぼんやりと考えこんでいたり、ノートに落書きをしていたりするようになってきた。4.資料とその解釈
(1)既存の資料●知能・学業
知能偏差値 52 (高1、教研式)
学習態度がまじめで、知能偏差値に比してよい成績を修めている。●性格
性格検査(YG) (高1 4月) 判定はE型(不安定消極型)である。特に、抑うつ性の大きさと非活動的、社会的内向が目立つ。この検査結果から、自己主張ができずに内に抑えてしまって悩んでいる本人(以下A夫という)の様子がうかがえる。担任は、礼儀正しく言葉づかいもていねいな生徒であると見ている。
●対人関係自分から積極的に友達をつくることはできないので交友関係は狭い。しかし、クラスの中では気持ちのやさしい級友として見られている。また、担任との関係もよい。
●家族構成 (2)新たに収集した資料●身体症状(母及びA夫との面接から)
・現在、不眠や肩こりを訴えて体調が悪い。
・その他の異常は特にない。●性格(母親から見たA夫)
・弟思いでやさしい。
・父親に対して言いたいことが言えない。●家族の結び付き
本人が中2のころから父親は遠方への単身赴任