研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -014/071page

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事例 3

孤立を乗り越えて集団になじめるようになった中学生の事例

1.主訴    集団不適応

2.対象    中学校1年 女子

3.問題の概要

 もともと内気を性格ではあったが、小学校5年のころから急に口数が少なくなり、笑顔もあまり見られなくなった。授業中や休み時間など一人でぼんやりしていることが多くなり、友達の輪の中に入っていこうとしなかった。
 中学校に入学したが友達が一人もできず、学級で孤立していた。友達や先生が声をかけてもいつもうつむき黙りがちであった。欠席することはなかったが、朝から吐き気や手足のしびれ等の身体症状を訴えて保健室に行き、そのまま早退することを繰り返していた。

4.資   料

(1)本人(以下A子とする)に関する資料

● 身体の発達と特徴

 小柄でやせている。
 近視のため眼鏡を使用している。

● 知能、学習の状況

 知能偏差値 38(中1、教研式)
 学習成績 (小6は3学期、中1は1学期)
 
小6 2 2 2 2 3 4 2 1  
中1 2 1 2 2 3 4 2 1 2
  絵を措くことが好きで美術は得意科目である。
 運動能力が低く体育を苦手としている。1学期の4、5月は体育の授業を見学することが多かった。

● 身体症状

 中学入学後、登校前に頭痛や吐き気を訴えたり鼻血を出したりすることが続き医師の診察を受けたが、精神的ストレスが原因になっていると診断された。

● 性格、対人関係

 幼少期より反抗や自己主張をすることが少なく非常に引っ込み思案であった。また、一人遊びが多く小学校入学後も交友関係が乏しかった。

● 心理検査の結果と解釈

  不安傾向診断検査(田研式GAT)
 総不安偏差値が80と非常に高く、孤独傾向、恐怖傾向、過敏傾向が特に強い。

バウムテスト (5月実施)
バウムテスト(5月実施)

紙面一杯に描かれた大きなバウム(樹木)ある。どっしりとして頑丈な根や幹に比べ、網の目のようにくねりながら伸びる細長い枝はバランスを欠いている。枝の先は開放され、左側に筆圧の濃い強調がみられるのも特徴である。

 感受性が豊かで外界からの刺激を受けやすい性格の本人が強い不安におびえ、自己統制ができず思考が混乱している印象をうける。左上部の切断された枝は、母と祖母のいさかいや父の家出など本人にとってショックな心理的外傷体験が投影されたものと解釈できる。


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