研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -016/071page
意図的につくる。
7.指導援助の経過
(3)学級ではA子の悩みや苦しみを理解し、よりよい交友関係が結べるようクラスの受け入れ態を整える。
(4)担任、養護教諭、部活の顧問教諭等が協力してA子の指導援助に当たる。(A:本人、カ:カウンセラー、担:担任、養:養護教諭、部:部活顧問教諭)
(1)家庭環境を改善し情緒の安定を図る。● 夫婦関係の調和、連合を強める。
A子の不適応状態は家族関係のひずみからきていることに気づかせ、夫婦関係の改善を求める。カ:「娘さんが頭痛を訴えたり学校を早退したりするのは、何かのサインかも知れませんね。家庭で思いあたることはありませんか。」
● 親子の結びつきを強める。
両親、顔を見合わせながら
父:「そういえば、二人がけんかしたときはたいへんだったよな。」
カ:「そんなとき娘さんはどうでしたか?」
母:「悲しい表情でいつもおびえていました。」
カ:「いつもおびえていた………。」
しばらく沈黙の後
父:「娘には悪いことをしました。私達二人のことがとても心配だったのでしょう。」
母:「私達が仲良くすることが、娘にとって一番大切なことなんですね。」
カ:「このように娘さんのことを心配して、お二人で相談に来られることは、とても素晴しいことじゃありませんか?」
面接を続けるなかで、A子の問題解決のため二人で努力していこうとする意識が高まり、夫婦関係が次第に改善されていった。また、祖父母との問題にもふれ、母親と祖母との関係改善にも努力がなされていった。
母:「今までだと祖母からの電話には夫と娘しか出なかったのですが、今ではなるべく私も話すように努めています。」
カ:「良いことですね。おばあちゃんもきっと喜んでいるでしょう。」
父:「今度は三人して行ってみたいと思います。」母:「近ごろ娘が私に甘えてくることが多いんです。中学生にもなってと思うんですが。」
(2)学校環境を改善し集団への適応を図る。
カ:「中学生になっても甘えたい……… どういうつもりなのでしょうね。」
母:「今まで、娘をかまってやることが足りなかったのか知れません。」
カ:「お母さんは仕事で毎日忙しいから無理ありませんよ。でも何かしてあげたいですね。」
母親は、A子といっしょに入浴することや、父親が夜勤や出張で夜不在のとき二人で寝ることなどを考え、実行した。
母:「夏休みに主人と娘が1週間の旅行を計画しているのですが、私は休みをたくさんとれないので行けそうにもありません。」
カ:「それは残念ですね、家族みずいらずで楽しく過ごせる絶好のチャンスなのに、娘さんもがっかりなさるでしょう。」
その後日程を短縮し予定を変更して母親も加わり、親子3人の家族旅行が実現する。とても楽しい旅行であったとの報告を受ける。
父:「私が夜勤だったり出張だったりすると翌朝決まって娘の体の調子が悪くなるのです。」
カ:「お父さんが家を留守にすると何か不安なことでもあるのかな?」
父:「私のことが心配なんです。また出て行ってしまうのじゃないかって。」
カ:「娘さんの心配をなくしてあげたいですね。」
父:「職場から電話をかけて学校の様子を聞いたりしてみます。」
カ:「それなら安心するでしょう。」● 折にふれ担任が温かい言葉かけをする。
担:「きょうは体の調子どう?気分が悪くなったら無理しないで保健室で休んでいいのよ。」
「きょうは頑張って一日学校で過ごせたね、