研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -018/071page

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事例 4

学校ではしゃべらなかった小学生が話せるようになった事例

1.主訴    か ん 黙

2.対象    小学校4年 男子

3.問題の概要

   幼稚園入園当時(5歳)から次のような言動がみられた。園舎に入ると口をきかない。名前を呼ばれても返事をしない。友達と一緒に歌うこともしない。しかし、園舎を離れると特定の友達とは話す。自分の家では、だれとでも何のためらいもなくしゃべる。小学校入学の数日前、幼稚園での様子を知って家庭訪問をした先生とも普通に話した。

 小学校入学式当日、先生の呼名には答えなかった。授業中はもちろん、休み時間の遊びの中でも担任や友達としゃべることはなかった。しかし、1学年末の時点では、国語の朗読のときなど、小声ながら先生や友達の後について口を開くようになった。その後、多少声は出るようになってきたが、このような状態が2学年末まで続いた。

 3年生になってから、休み時間になると担任や特定の友達からの言葉かけに答えるようになった。

 4年生になってからの状況は次のとおりである。授業中は口をつぐみ、ただ、聞いている、黒板の字をノートに写す、作業するなどという状態である。清掃など授業外の作業は熱心にするが、必要があっても自分から話すことがない。遊びの中では、特定の友達とはしゃべっているが、自分から話しかけることはない。校外に出ると、仲のいい友達とは声を出して対話する。自分の家では普通に話すし、電話にも出て話す。

4.資   料

(1)本人(以下A夫)に関する資料

1. 身体の発達 
         
● 出生状況:4,500g、鉗(かん)子分娩。
● 発育状況:生後5か月時に小児ぜん息を発症。
 2歳過ぎてから快方に向かう。この間多くの医師の診療を受けた。3歳時に気管支炎にかかった。体格、体重ともに発育が遅れ、歩き始めは2歳半ばを過ぎてからであった。

2. 保育状況

 0〜4歳は家庭保育。病弱であったことから大事に育てられた。5歳時に、同年齢の友達より1年遅れて幼稚園に入園した。

3. 知能・学業

● 知能:知能偏差値 38(小3、教研式)
● 学力:学力偏差値(小3、教研式)
    国語 37、算数 30、社会 32
● 学業成績:小3 平均 2(5段階評定)

4. 性格:内気、神経質、気にしやすい

5. 話す体験:
 始語は2歳過ぎてからである。
 始語が多少遅れたため、母親は方々の医師を訪ねた。祖母、両親とも世間体を気にしていた。また病弱であったことから過保護に育てられ、A夫は言葉で自分の意志を伝える機会が少なかった。
 5歳時、幼稚園入園数日後、静しゅくな朝の会の時間に、A夫は突飛な声で「○○シェンシェ(先生)」と呼んだ。その声と発音がおかしいということで、友達に笑われ、先生に注意された。帰宅後、保育参観をしていた母親からもひどくしかられた。

(2)家族に関する資料

1. 家族構成:祖父母、両親、A夫、妹
2. 家族の状況         


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