研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -022/071page
事例 5
強迫的な悩みを解消した高校生の事例
1.主訴 強迫神経症的な言動
2.対象 高等学校1年 女子
3.問題の概要小学6年のころ「ガスがどこからともなく漏れ出して大爆発を起こす。」「髪の毛や植物の種子が飛んできて目に突き刺さる。」といった思いに悩まされた。専門医の治療により一時症状は改善されたが、中学2年ごろから再び「ガラス戸のわきを通ると突然ガラスが割れて、その破片が体に突き刺さる。」というような恐怖感を訴え始めた。
高校に入学した現在でも強迫的な症状は消えずクラスの男子生徒からは「変人」と馬鹿にされ、女子生徒からも敬遠されて話し相手もなく孤立化している。また授業中は緊張して先生の質問に答えられなかったり、周囲の視線をこわがって黒板を見ることができなかったりの状態が続いている。4.資 料
(1)本人(以下A子とする)に関する資料● 身体の発達と特徴
出生時体重 2,600g、混合栄養、偏食、少食で発育不良、中学2年のとき一時食欲不振となり体重が減少する。現在、高校生としては小柄である。● 知的側面
平仮名や簡単な漢字などは小学校入学以前に覚える。まじめに勉強するタイプで小学校の成績はトップクラスであったが、高学年になってから下降し始める。● 習 癖
6歳のころまで指しゃぶりがあり、小学生のころはつめかみが激しかった。● 性 格
人から言われたことを無批判に受け入れ、自己主張したり反抗したりすることが少なく、人の言いなりになりやすい。ピアノの練習や勉強も親の言いつけに逆らわずいやでも実行した。
きちょうめんで完全癖の面がみられる。宿題や作品の提出など期日までにきちんと仕上げないと気がすまず、徹夜することがあった。また、書き損じたノートのページは破りとるか、新しいノートにはじめから書き直しするかしないと気がすまないところがあった。
神経質、過敏で繊細である。しかし生活全般に注意が向かず、髪型や服装などには無とんちゃくで女の子らしさに欠けるといった矛盾した面も見られる。性格検査(YG) 5月実施
● 対人関係
E型であり、人との接触を避けて自分の殻に閉じ込もり、神経質で抑うつ性の高い情緒不安定の状態を示している。幼児期より交友体験に乏しく家での一人遊びが多かった。父親の転勤によりその都度4回の転校を繰り返し、新しい友達をつくるのに苦労した。
小学校低中学年と先生によくなつきかわいがられていた。学級委員をつとめ、休み時間には毎日のように先生に質問したりして優等生ぶりを発揮していた。小学5、6年の厳しい担任に対しては恐