研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -023/071page

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怖心を抱いていた。
 小学校高学年から中学、高校を通して親しい友達がなく孤立している。

(2)家族に関する資料

● 家族構成

家族構成

● 両親の性格と養育態度

 父親は会社の管理職をつとめ、有能で仕事熱心だがA子の養育は母親任せである。帰宅時間が遅く出張も多いためA子と接する機会が少ない。

 母親は社交家ではきはきしている。率直に表現する性格であるが、そのために相手のひんしゅくを買うことも多い。きちょうめんで面接のときメモを取ったり、同じことを繰り返し尋ねて確認したりするところが見られた。A子に対しては一人娘のために期待が高く、3歳の時からピアノを習わせたり家庭教師をつけたりして勉強を強制し、成績のわずかな変化にも一喜一憂していた。またA子に対する言葉使いや礼儀作法などのしつけも厳格で、動作がのろくはっきりしないことをしかることが多かった。

親子関係診断検査(田研式)  5月実施
親子関係診断検査(田研式) 5月実施

5.診   断

 幼少期より母親の完全主義のもとで養育されたA子は、融通性、適応性に欠き、繊細、過敏で完全癖のある性格特性を持つようになった。

 A子は母親の高い要求に応えようとして学校では優等生ぶりを発揮し、母親の教えに合った行為や行動を取り続けたが、学年が進むにつれて成績が下降し、友達や先生からの評価も下がって次第に理想と現実とのずれに気づき始めた。

 これ以上母親の高い要求に応えられないことを知ったA子は、強い不安に悩まされるようになった。しかしこの不安を解消する手段や方法を見い出せず、厳しい担任の言動や度重なる転校に伴う環境の変化によって不安は更に増大し、常に心の安定を求める状況に置かれていた。

 このようななかでA子が無意識にとった不安解消の手段が現在の問題行動であり、周囲の無理解から、更に問題が悪化していったものと考えられる。

6.指導仮説

 A子には医学診断の必要性が内在していると考えられるので医療機関との連携を図り、A子へのカウンセリングを通して自己洞察を深め、自己変容を図っていけば問題は解決するものと思われる。

  1. 医師の診察を受けさせ、その後医師と連携して指導援助にあたる。
  2. A子の訴えを受容的に傾聴し、支持することによってA子の不安や緊張を解き、自由な感情の表出をさせる。
  3. カウンセリングによって自己洞察を深め、自己概念の変容を図る。
  4. 自律訓練法を導入し、不安、緊張を和らげ、情緒の安定を図る。
  5. 両親へのカウンセリングを実施し、生育史を中心に親の養育態度とA子の問題行動の関係について気づかせ、理解を深めさせて、親子関係の改善を図る。


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