研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -025/071page
カ:「お母さんに対してはどうなの?」
両親に対してあまりにも従順すぎた自分に気づき、場合によっては自己主張することも大切なことを理解しはじめた。
A:「口うるさく勉強のことを言ったりするのだけど、何も言えないんです。」
「この前も少女雑誌や少女文学を読んでいたら、もうそろそろ卒業したらって……」
カ:「自分の好きなものを読んで満足を得られればそれでいいんじゃないのかな。」
A:「これからは自分の思っていることをお母さんに話すようにしたい。」
自己洞察が深まるにつれ、自分の主観にとらわれず、客観的に考え行動できるようになった。
A:「友達をほしいとは思わない。思うと憂うつになる。」
また、自分のありのままの姿を認め、本音を語るようになった。↓
「自分の気持ちに素直じゃなかった。これが苦しみの原因だったような気がする。」
「本当は友達が欲しくてたまらない。」(3)自律訓練法の導入
必要以上の緊張や不安を取り除くためには自律訓練法が効果的であることを説明したところ、A子がやってみたいと希望したのでカウンセリングのなかで実施した。また家庭でも継続的に実行した。更に自律訓練法を併用した系統的脱感作法を試み、不安の解消、情緒の安定を図った。A:「気持ちが落ち着いてきた。」
(4)両親へのカウンセリング
「学校でもリラックスできるようになり、まわりの視線が気にならなくなった。」
「気分がいいので勉強の能率もはかどっている。」カウンセリングの過程で、母親は今までのかかわりが過支配的だったこと、父親はかかわりが少なすぎたことを反省し、お互いの役割を明確にして本人の成長を温かく見守っていく決心をした。
8.考 察カウンセラーは受容的、共感的に対応しながらA子が自分自身で問題を見つけ、自分の中に潜む可能性を探り出せるよう援助を進めていった。その結果、今まで適切に自分を見つめられなかったA子の気持ちに変化がみられ、自分自身を見つめ問題に気づき、新たな自己像を確立すべくその努力がはらわれていったのである。
A:「今までの自分はどうかしていた。」
「自分の気持ちに正直に生きたい。」
「自分の方から友達に話しかけてみたい。」
紙面では書きつくせなかったが、両親の養育態度の改善や学級担任の理解と適切なかかわりも、A子の問題を解決するうえで有効であった。
現在では強迫的な思いに悩まされることや、友達を避けて自分の穀に閉じこもることは少なくなり、のびのびと生活できるようになってきてた。A子の変容ぶりは、YG性格検査の結果がE型から、A型へと変化したことから情緒的に安定したことがうかがえる。