研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -028/071page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(1)身体症状(チック)については、一切注意をしない。
(2)運動させ、身体を動かすことにより情緒の安定を図る。
(3)集団生活のあり方などについて指導する。
(4)家族間の人間関係の調整を図り、A男への接し方の改善を図る。特に父親は積極的にかかわりを多くするように援助する。母親は過保護、過支配の態度を改め、温かく見守るようにする。

 問題行動改善のために、学校と当教育相談部が常に連絡を取り合い、一貫した指導援助ができるように配慮する。情緒の安定が図られるようになり、自信が持てるようになれば、症状は消失するものと思われる。

7.指導援助の経過

(1)身体症状の理解を図る指導 (学級担任)

● 級友に対して

 A男の奇声はくせで必ず治ること。一番必要なのは学級みんなの支えと協力であることを話す。「A男に対して、みんなができることは何だろうか。」の問いに、「はやしたりしない。」「気にしないようにする。」「一緒に元気に遊ぶ。」などが出され、真意がわかってもらえた。

● 家族に対して

 祖母は、「家にはキチガイがいる。」「私の言うことを聞かないからそういう声が出る。」などと口に出してA男の反発をかっているので、そのようなことを口にしないように父母から話してもらうようにした。また、父母や兄も同様の配慮をするように話し合った。

(2)情緒の安定をはかる指導

● 担任を中心にして話し合われた具体策  友達と十分に遊んだ後は、明るい表情で帰宅した。スポーツ少年団では選手になるための目標を持ち、練習に励み、みんなにも認められ、A男は自信を持った。それまでは、多い時で授業中20〜30回、奇声を発していたが次第に少なくなってきた。

● 当教育相談部での遊戯療法、運動療法

・ 体育館での運動
 初めはボールでの的当て、はしご登り、ボクシングなど遊びが次々と変ったが、次第に一つのことに集中していった。夢中になって遊んでいる時は症状は出ないが、勝負に負けたり自分が失敗した時に奇声が出る。
・ A男、母親と相談員の3人でのバドミントン
 常に1番でありたいという意識がありありとわかる。勝つと母親に、にこっとほほえむ。家でも機会をみて家族同士で遊ぶことをすすめた。

● 家庭では

 母親、兄は積極的にA男の相手になっている。しかし父親はあい変らずであるので、父親のかかわりを多くするように担任が依頼した。

(3)集団生活でのあり方の指導

● 学校では大いにみんなの前で認めながら、集団生活のルール、けじめ等、静かに納得できるように話した。

・給食時、気にくわないことがあって配ぜん台の上にズックのままで上がる。足をたたく。「バカ、バカ。」と泣き叫ぶことがあった。それに対しては、落ちついてから、静かに、しかしき然とした態度で話して聞かせた。「おっかねえどきもあんだな。」と指導のされ方を見ているようである。

・校内水泳大会時
 大会では、ほとんどの種目にがんばって参加し自由型では3位となる。終了後、真剣に参加したこと、今日まで1日も休まず練習したこと、その成果が3位であったことなどを話し、みんなで拍手をして賞賛した。

● 家庭では小遣いの使い方について、計画的に


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。