研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -032/071page

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 すなわち、抜毛することによって、「自分は寂しい」「家でも、学校でもだれも相手になってくれない」「寂しいから何とかしてくれ」という訴えをし、自ら自分自身をなぐさめている表現形と考えられる。

7.指導仮説

 精神科医の診断によると、現在の様子では入院の必要はなく、学校と当教育相談部での対応で改善されるであろうという判断であった。
 そこで、次の事が達成できれば抜毛が改善されると考えた。

 そのため、学校と当教育相談部が連携して次のような指導計画を立てた。なお、抜毛の改善には一般に長期間かかると言われているため、そのつもりで指導することを申し合わせた。

● 学校(特に学級担任)の役割

● 当教育相談部の役割

8.指導援助の経過

(1)学校での対応

 指導援助は1年時より卒業時まで続いた。以下は、学年毎にポイントとなった指導内容である。
 なお、学級担任は1年毎に交替があったが、指導仮説を引き継いだ。

 <1年時>
● 学級全体への指導
 社会は様々な人間が互いに支え合って成立していること。そのため、互いに思いやり、いつくしみが大切であることを折にふれ話した。また、各教科担任へも同様の内容の話をしてもらった。

● 友人関係の調整
 ・温和な生徒と席を組ませた。
 ・欠席の時は、級友にプリントを届けさせた。
 ・級友に本人と遊ぶよう自然を形で依頼した。

● 本人との面接(毎水曜日の放課後実施)
 面接の中で、家庭が暗いこと、両親が自分の話を聴いてくれないこと、姉弟が自分をバカ呼ばりをすることなど、家庭での不満、また、学校での友人関係の不満を述べることが多かった。

● 両親との面接(計5回実施)
 抜毛の原因が家庭にあることを指摘せず、この年代の子どもには、まだ保護的な対応が必要であることを話し、保護的な対応を提案した。また、抜毛のことは一切注意しないことを依頼した。

 <2年時>
 学級全体への指導、友人関係の調整ならびに本人、両親への対応は1年時と同じようにした。
 なお、日頃、本人へ意識的に対応したことは、「かぜひくなよ」「寒くないかい」などと常に心配しているというメッセージを伝えたことである。
 また、遠足や球技大会など学校行事等で、本人が一人ぼっちになっている時は、自然な形で近寄り話し相手になるよう努めた。
 さらに、学級担任が教科の準備室を管理していたことから、情緒的に不安定をきたし早退の希望があった場合は、その準備室で休ませ自由にふるまわせた。


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