研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -033/071page

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 <3年時>
● 学級全体への指導
(本人を特に意識して)学級担任として全員を卒業させたいこと、苦しくても互いに助け合ってがんばること、やるべき事はしっかりやることを折にふれ話した。

● 本人との面接(月2回の定期面接)
 共感的に対応することを基本にしながら、生き方に目を向けるようなアプローチをした。

● 両親との面接(学期2回の面接)
 本人への保護的なかかわりを続けることを基本にしながらも、本人を大人として扱うよう依頼した。

 その他として、遅刻してきた時は「どうしたの?」(心配そうに)「がんばれよ」とだけ声をかけた。また、水泳の時間に欠席することが多かった(理由は髪が薄いことがわかるため)ので、「つらいだろう」と受けとめた上で、逃避しないよう説得した。

(2)教育センターでの対応

 以下は、3年間の面接のポイントである。

● 本人との面接(週1回の定期面接)

 <カウンセリング>
 抜毛は一人でいる時や姉弟が両親と話をしており、自分だけが会話の中に入れない時、一人で留守番をしている時などにすることに気づき、「自分で寂しい時にするのかな」と話した。

 <運動療法>
 本人の得意とする卓球をした。初めはラポール形成の意味もあって本人に勝たせたが、困難に立ち向かう気力を育てる意味で次第に負かすようにした。

 <箱庭療法>
 初回は寂しい内容の作品であったが次第に内容が豊かなものになってきた。

 <遊戯療法>
 家庭で、寂しい思いの時間を持たせないために箱庭で使用する小動物を紙粘土で作成することと本人の得意とするイラストを描くことを次回の来所までの宿題にした。

● 両親との面接(月1回の定期面接)

 抜毛の一番の原因は、養育の不適切さにあることに気づかせる目的で実施した。その結果、「特に、あの子はおとなしく、子どもの中で一番手をかけてやらなかったし、今でもそうだ。悪いことをしてきた。」と述懐した。

9.指導結果

10.考   察

 問題の解決をみて終結することができたことは次のように考えられる。
  1. 診断、指導仮説が適切であった。
  2. 二次的な問題としての不登校になる前に対応できた。
  3. 対症療法でなく、問題の背景にある心情に対応した。
  4. それぞれの学級担任が常に相手を思いやる人柄であり、学級担任が学校内で人間的に信頼され本人への指導援助に対して支持され共通理解された。
  5. それぞれの学級担任が問題解決に熱意があり常に本人を意識した対応と教育相談の基本に忠実であった。
  6. 専門機関との連携がはかられ、適切な理療法がなされた。


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