研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -035/071page
で、次は弟である。父親や姉を嫌い、姉には憎しみを抱いている。母親には甘えたい気持ちが十分にあるが、拒否されることが多い。
● 家族の雰囲気
A子が4歳の時、父親は女性関係のトラブルから、たびたび母親と衝突している。共働きであるが経済的に苦しい生活をしている。家族みんなで遊んだり、ゆっくり話をすることなどはめったにない。● 家族の性格と養育態度
母親……子育てに関心がうすく、小さい子のめんどうは、姉や祖母にほとんどまかせている。炊事や洗たくも姉やA子に分担させている。夫に対する不満のはけ口を勤めに求めているようである。
父親……子どもに対し厳格で暴力をふるうことが多い。約束を守らないと、食事をさせずに外に出すことがある。食事中は子どもにテレビを見てはいけないと言いながら、自分だけはテレビを見ながら食事をしている。しかし弟にだけはおもちゃやお菓子をよく買い与える。姉………両親の要求によくこたえているので、かわいがられて育った。A子の世話を一切しているが姉妹の仲は良くない。
弟……‥両親が待ち望んでいた男の子であるので、みんなから大事にされている。A子を慕いよく遊んでいる。● 教育への関心
5.診 断
両親とも、子どもたちの勉強をみてやろうともしない。学校からの連絡にも関心が薄い。授業参観には、仕事が忙しいという理由でほとんど参加しない。おもらしに対して、父母はただしかるだけであった。A子がおもらしをするに至った関係を図示すると、次のように考えられる。
A子は父親の期待しない子であり、また母親や祖母は仕事が忙しいことから、だれからも相手にされることが少なく成長してきた。そのため愛情飢餓の状態が続いた。弟の誕生は、A子から完全に両親を奪ったため愛情飢餓の状態が一層増大した。 おもらしは、「私の方をふり向いて」「もっと私をかわいがって」と叫ぶA子の切実な訴えではないかと考えられる。また基本的生活習慣のなさやたびたびのおもらしは、他の子どもたちに不潔感を与え、ますますA子を孤立的存在にさせていったと考えられる。6.指導仮説
A子の問題の中心は、愛情飢餓と考えられる。そのため、家族関係、交友関係の改善を図り、十分にA子の愛情欲求を満足させていけば、情緒的に安定し症状は消失するものと思われる。