研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -036/071page
主な指導事項は
<学校では>
- おもらしをしても、注意したり叱ったりしない。
- A子への温かいかかわりを多くし、基本的生活習慣を身につけさせる。
- A子を伸び伸びと生活させる。
1.学級担任、級友と十分に遊ぶ。
2.担任の特技である箱庭療法を継続的に行う。
3.A子のよさをみつけ、学級全体で認めていく。
4.その都度機会をみつけ、基本的生活習慣を教える。
<家庭では>
5.おだやかな家庭の雰囲気づくりをする。
6.母親はA子へ優しく温かくかかわりながら、基本的生活習慣について教える。
7.両親の養育態度を改善する。
※ 学校では、担任が指導援助にあたる。7.指導援助の経過
週1回放課後、教室を利用してA子との面接を行った。母親には、家庭訪問や電話連絡を通してアプローチした。指導経過については、指導仮説1〜7と対応しながら述べる。(1)5月〜8月(おもらし3回)1,2,5,6
担任:「今日は失敗しちゃったね。でも気にしなくてもいいよ。先生もよく失敗したもんだよ。」
● A子が小学3年になり、初めてのおもらしのとき、放課後一緒に下着を洗いながら話し合った。
A子:「えっ先生も……‥。本当はね、早く治したいんだけど………。」
担:「先生応援するよ。これから先生と一緒にお話したり、箱庭をつくったりしながら、おもらしを治す方法を考えてみようか。」● 初めはA子の抱えている問題を表したような箱庭をつくった。(赤ちゃんから遠く離れて母親を置く。父親は左下すみに腰をかけて眠っている)
● おもらしをした日は、一緒に家に行き状況を母親に説明した。その中で母親は、A子が幼稚園の頃、下の子どもが生まれたのであまりかまってやれなかったこと、姉がよくやってくれていたので、A子もすぐに大人になるものと思っていたことを話し、かかわりのうすかったことについて反省しはじめた。以後、毎回A子は自分から箱庭をつくり、楽しそうに次から次へと話し始めた。母親とは必要あるごとに連絡をとった。
- おもらしをしても叱らない。
- 朝食、歯みがき、洗顔をさせる。
- 姉との比較はやめ、A子の話を聴いてあげる。
<その結果>
(2)9月〜10月(おもらし4回)9,4,5,6
- 箱庭づくりには興味をもちはじめた。
- 休み時間、担任へも話しかけまつわりついてきた。
- おしっこに行くことを教えるようになった。
- 授業中、席を立たなくなった。
- 家庭では、笑顔がみられるようになった。
● 学習発表会練習のため、面接を一時休止した。その結果、だっこやまつわりつきが多くなった。指しゃぶりも激しくなり、授業にも集中できなくなった。● 学習発表会では、劇の中で自分の役を見事にこなした。「やればできるじゃない。」「上手にできたよ。」と級友からもほめられた。このことでは、最後までA子につきっきりで教えてくれていたB子の存在が大きかった。
● 服装の乱れ、忘れ物が多いので母親に電話連絡した。朝、十分に心がけてやるようにしたいとの返事があった。(3)11月〜12月(おもらし1回)1〜4,6,7
A:「私、お母さんにだっこされたことないんだよ。」
● 再びA子との面接を開始する。箱庭をつくりながら、自分のことを話し始めた。
担:「そりゃ、さみしかったねえ。」