研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -038/071page

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事例 9

授業中の頻繁な尿意を解消した中学生の事例

1.主訴    頻   尿

2.対象    中学校3年 女子

3.問題の概要

 小学校1年の5月、休み時間に遊びに夢中になりトイレヘ行かなかったため、授業中、おもらしをし、みんなの前で担任からきつくしかられ、友達にも笑われた。そのことを知った母親にもしかられた。翌日から恥ずかしい思いで登校した。その後、授業になると尿意を催し、用便を申し出るたびに担任から厳しく注意された。このような状態は高学年まで続いた。その後、自然に消失した。

 中学校3年時、父の転勤に伴い転校した。その5月末の修学旅行中、バスの中で突然尿意を催しバスを止めた。それ以来、授業中、頻繁に尿意を催すようになってきた。当初、好きな美術の授業ではみられなかったが、次第に症状が現われてきた。最近ではクラスの生徒から冷ややかにみられることや、ひやかされることなどからほとんど毎日1校時が始まると尿意を催しそのまま保健室へ行き泣いていることが多くなった。なお、家庭においても現在、2〜3時間おきに排尿している。

4.資   料

―生物的次元―

● 身体的発達

 特に問題はない。

● 排尿の問題

 小学校入学前は特に問題はなかった。夜尿はない。内科医によれば授業中頻繁に尿意を催すことは心因性のものと診断された。(小1、9月)

● 身体症状

 現在、生理不順、生理痛、下痢、左下腹部痛、疲労感、頭痛などがある。
 なお、以前から自分の身体の状態についていつも気にしていた。

● 摂食状況

 ジュース類をできるだけ飲まないようにしている。

―心理的次元―

● 知能・学業
・知能偏差値 45(中3、教研式)
・学業成績
 5段階評定で2年時は平均3の段階であったが3年次には平均2の段階に下降した。
・ 学習状況
 静かでまじめな学習だが自分で考えていることを思うように発表できないでいることが多い。

● 欠席状況

 1年 14日(生理痛、腹痛)
 2年 17日(生理痛、腹痛)
 3年 13日(生理痛、腹痛)(9月現在)

● 対人関係

 3、4歳のころは家の中での一人遊びが多かった。幼稚園でもみんなの中に入れず一人で本を見ているようなことが多かった。小学校低学年では近所の子だけとの遊びであった。高学年になってからも特定の友人2、3人としか遊ばなかった。中学校ではテニス部に入ったが友人はできなかった。転校後は友達の中に入っていけず、休憩時でも一人で外を見ていることが多かった。授業が終わるとすぐ帰宅し、ほとんど家の中でテレビをみていた。最近では学校でも友達を避けるようにしている。


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