研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -042/071page
事例 10
学校生活を妨げる腹痛・下痢が治った高校生の事例
1.主訴 緊張場面での腹痛や下痢
2.対象 高校学校2年 男子
3.問題の概要小学5年のころから、全校集会、発表会など緊張するような場面になると下腹部に不快感をもよおしトイレに行った。
中学時代も集会の時や朝の会、帰りの会の司会を担当する時、発表の順番になっている時など、ガスがつきあげてくる感じになりトイレに行くことがしばしばであった。中学3年間で、登校時間の腹痛を理由に42日欠席した。2年の時、専門医の診察を受けたが身体に異常がなく、神経性のものとの所見であった。高校入試の時、バスでゆられ不快になり下痢をおこし保健室で受験した。入学式の時も緊張のあまり腹痛を起こし参加できなかった。それ以降、学校で緊張する場面や嫌なことがあると腹痛、下痢が続き早退したり欠席した。また、通学列車に乗るとき腹痛や下痢を催した。その時からバスや列車に乗ると下痢を起こすのではないかと不安になり、最近本人は両親に下宿するか、バイクで通学したいと言っている。
4.資 料
―生物的次元―● 身体・生理
・ 人工栄養で育ったがよくミルクをはくことがあった。また、下痢を起こしやすかった。―心理的次元―
● 知能・学業これといった得意、不得意の教科はないが、本人は数学、英語、体育を苦手としている。
- 小学校の成績 中位
- 知能偏差値 58(中1、教研式)
- 中学時代の学業成績 中位の上
- 高等学校1年の学業成績 中位の下
● 習 癖
・ 特にない。● 性 格
性格検査(YG) (高1) B′型、社会的不適応積極型であり、特に主観的、社会的外向等の因子の得点が高い。CMI健康調査 (高1)
・身体的自覚症としては、消化器系、泌尿器系、疾病頻度についての自覚が高い。
・精神的自覚症としては、不安、過敏、怒りについての自覚が高い。エゴグラム (高1)