研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -043/071page
・ 自己中心的な傾向がうかがえる。
―社会的次元―● 家族構成
● 家族の性格と養育態度5.診 断
- 母親は本人が小学校2年まで勤務しており、祖母に養育された。祖母は口うるさく、両親は祖母の言葉にさからわず、本人は甘やかされて育てられた。
- 父親は優しいが、周囲を気にするタイプである。厳しさが足りなく、拒否的なかかわりが多い。母親の養育態度に不満をもっている。
- 母親は心配性で、自分の身体が弱いことから常に子どもに対し、病気しないようにと口にしていた。また、周囲を気にしすぎるタイプである。養育態度は、拒否型、不安型、矛盾型である。
親子関係診断検査(田研式)
- 姉と本人とは大変仲がよく、両親に話せないことでもよく相談しており、本人は姉をたよりにしていたが、4月より短期大学に入学し別居した。
- 祖母は本人を溺愛し、本人とは良い人間関係であったが、3月祖父が入院し看病のため付き添うことになり、本人へのかかわりができなくなった。
本人は、祖母の溺愛や両親の拒否的な養育態度などにより、神経質な性格が形成されたものと思われる。また、両親の周囲を気にし緊張する傾向を受け継いだものと考えられる。そのため、緊張場面に出合うと身体的に弱かった消化器関係の問題が生じたものと思慮される。現在の問題の背景には、心のよりどころとなっていた姉や祖母との接触が少なくなったことがうかがえる。
6.指導仮説学校、専門医、当教育相談部が連携して指導援助に当たる。
(1)本人の精神の安定をはかるため、自律訓練法を指導する。
学校は主に環境調整、専門医は医学的なアプローチ、当教育相談部は心理面での援助と家庭内の環境調整に当たる。
(2)家庭環境の調整について指導援助をする。
(3)学校では環境調整をする。
- 父親が本人の養育に消極的なので、積極的にかかわるよう依頼する。
- 母親には、本人に十分かかわるよう依頼する。
- 姉が通学可能な学校なので、一時本人の症状改善まで自宅より通学してもらう。
- 祖母には病院から時々帰宅してもらう。
本人の納得の上で、しばらくの間次のことを実施する。