研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -046/071page
事例 11
緊張場面での嘔(おう)吐の繰り返しが治った中学生の事例
1.主訴 神経性の嘔(おう)吐
2.対象 中学校1年 男子
3.問題の概要小学校時代、学期や学年の初め、また、転校した初日など環境が変わるたびにはき気を催した。
(1)順番で指名され、発表しなければならないとき
中学校では入学式当日、教室で嘔吐し入学式に参加できなかった。そしてまた、学校では、
(2)日番の日
(3)指名されて、よく答えられなかったとき
(4)叱責されたとき
(5)遅刻してきたとき
などの緊張に出合うと吐き気を催したり、嘔吐することから保健室で休んでいることが多くなってきた。
4.資 料―生物的次元―
● 身体・生理
・においに敏感でいやな臭気に会うとよく吐き気を催した。
・乗り物酔いがあり、吐くことがある。
・嘔吐について、中学1年の4月専門医の診察では器質的異常は認められず心因性との所見であった。―心理的次元―
● 知能・学業
・学業成績 中位(中1)
・知能偏差値 56(中1、教研式)● 運動・行動
・体育技能抜群で、小学校3年よりスポーツ少年団のバスケットボール部レギュラーとして活躍。しかし、水泳は、水に臭いがあるといって好まない。
・中学では、バスケット部に所属しているが、登校しても悪心のため保健室で休んでいることがあり部括動に参加していない。● 習 癖
・4歳まで指しゃぶりが続いた。
・小さい頃より落ち着きがない。●性 格
諸検査や面接の結果から、次のような性格傾向がうかがわれる。
精神的に未成熟なところがあり、他から影響を受け易い。周囲に対し過度に気を使い神経質で過敏である。自己防衛的で内向的でもある。やさしく素直であるが、気の小さいところがある。また、完全主義的な面も見られる。● 対人関係
・友達は小学時代からつきあっている2、3人だけであるが、帰宅してからは遊ぶことは少ない。
・友達から自分が水泳できないことや、バスケットで失敗したことを言われるとすぐ怒って家に帰ることがしばしばあった。―社会的次元―
● 家族構成