研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -047/071page

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家族構成

● 家族の性格と家族関係

・ 父   親
 神経質、心配性、き帳面、完全主義的、養育は常に祖母、母親まかせ。

・ 母   親
 社交的、心配性、消極的拒否型、干渉的

・ 祖   母
 心配性、過保護、干渉的

・ 兄妹関係
 妹とはよくけんかをしていたが、今は仲が良い。妹は成績上位、明るく活発な性格で友人も多い。しかし、ささいなことでも気にする神経質なところがある。

・ 母親と祖母との関係
 母親と祖母との関係はうまくいかず、母親は祖母が子どもの養育に関して口をだすので因っている。父親は祖母に遠慮してあまり子どもの養育について口をださない。

・ 祖母と本人との関係
 本人を溺愛し、現在一緒の部屋に寝ている。
 本人は勉強のことでいろいろ言われるのでうるさがっている。

・ 家庭の事情
 本人が幼稚園、小学校1〜2年、5〜6年の計5年間父親は単身赴任のため別居していた。母親と祖母の不和のため家庭内の争いが絶えなかった。母親は本人の出生前から勤務しており、本人は祖母によって養育された。母親は子どもの養育について祖母と争うのをさけるため、帰宅するとすぐ自室へ行き趣味の手芸をしている。

5.診   断

 父母、祖母とも神経質で心配性であることから、おのずと本人の養育に関しても、こと細かに干渉したり、少しのことにも不安を示したりするようなかかわりをした。

 このことが、本人の神経質で過敏な性格傾向や、また、社会性の未成熟さの要因になっている。

 そのため、過度に緊張したり不安を示すことが多いものと思われる。

 以上のことが背景となり、過去の嘔吐の体験が、緊張や不安のときに嘔吐が起きるのではないかという不安をひき起し、現在の症状があるものと考えられる。

 なお、本人の日常生活において、緊張や不安を高めている原因としては、嘔吐に対する周囲の無理解、母親と祖母との不和、父親とのかかわりの少なさがあるものと思われる。

6.指導仮説

 本人の抑圧された感情の発散、緊張に対する耐性の強化、緊張場面の除去、家族関係の調整をめざし、担任と当教育相談部が連携して指導援助にあたる。

● 学校では(担任)
  1. 両親、祖母に対して、嘔吐についての心理的背景の理解を図る。
  2. 本人とのより強いラポール形成につとめ、学校生活での情緒の安定をはかる。
  3. 本人が緊張しないような学級の雰囲気づくりをする。
  4. 部活動顧問の協力を得て、本人の特技を発揮させ自信をつけさせながら困難に立ち向かう力をつけていく。
  5. 本人が緊張しないよう各教科担任に協力を依頼する。

● 当教育相談部では

(1)本人に対して
  1. カウンセリングにより
・本人の不安や欲求不満を傾聴し、抑圧された感情を発散させ、情緒の安定を図る。


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