研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -048/071page
・症状を自分でどう受けとめているか、どう克服しようとしているかについて自覚をもたせ、問題点を明確にして解決しようとする意欲を起こさせる。
2. 自律訓練法により
・ 緊張場面で自分の心身をコントロールする仕方を学習させる。(2)家族に対して
両親、祖母とのカウンセリングにより
● 両親、祖母の養育態度の改善をはかる。
・ "吐くこと" について、不安を示したり、注意したりなどの心理的を圧力をかけない。
・ 家事を分担させ、認め励ます。
・ 父親とのかかわりを強め、男性性を成長させていく。
・ 本人の生活全般に対して、極端に干渉したり、不安を与えるようなかかわり方をしない。
● 家族関係の結びつきの改善をはかる。7.指導援助の経過
(1) 学校での対応1. 家庭訪問
● 両親が気づいたこと。
・ 本人の吐き気を催す時間・場所、その前後の様子について幼児期より細かく情報を得る過程において、両親は、本人が緊張するためであることや、自分達がそうさせていたことに気づいた。● 両親に依頼したこと
● 家庭訪問、電話連絡を繰り返した。
・ 祖母と一緒の部屋に寝ているので、自然に自分の部屋で寝られるようにする。
・ 部活動に参加させることを、家庭でも勧める。2. 本人へのかかわり
本人との会話のきっかけを本人の得意とするバスケットボールの内容にした。その中で、部活動を勧めたが「練習をしたいのだが、吐くと困るので……」と迷っていた。そこで、部活動の顧問の先生に、本人の体調について話をしておくから、とにかく1回練習に参加してみるよう勧めた。その結果、部活動の意欲が生じ練習に参加するようになった。部活動の話をしてから、大分気さくに話しあわれる雰囲気になり緊張した様子がみられなくなってきた。3. 学級の指導
・機会あるごとに「お互いにそれぞれ異なる家庭環境で育ち、体力、能力みな異なっている。それを認め、良いところを生かし、足りないところを補い支えあって生きている。お互いの思いやりが一番大切である。」ということを話した。4. 部活動顧問の協力
・本人に見学だけでもよいからとさそい、しばらく見学させていたが、本人がボールをいじっているのを見て、本人を含めて1年生部員だけ校庭でパスの練習をさせた。上手なことをほめ自信をつけさせた。本人は、特に吐き気も起こさなかった。それ以後、練習に積極的になった。・新人大会終了後、学年毎にチームを作り本人をメンバーに入れたら大変喜んだ。
担任に対して、バスケットボールの練習に参加するようになってから、食欲がでて、吐き気も少なくなったと家庭から連絡があった。そのことを部活動顧問に知らせ、より一層の協力を依頼した。5. 各教科担任の協力
・ 意識的に、教科担任が本人の答え易い内容を質問し、答えさせるよう配慮してもらった。
・ 体育担当教師はバスケットボールのパスの模範演技に本人を指名し、その技能に対し全員に拍手をさせ自信をつけさせた。それ以降、指名されても、吐き気を催さなくなった。
(2)当教育相談部での対応とその変容● 本人との面接