研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -050/071page
事例 12
進路問題から陥った食欲不振を改善した中学生の事例
1.主訴 神経性食欲不振
2.対象 中学校3年 女子
3.問題の概要並びに資料を把握するまでの過程(1)初回面接 (問題概要把握の目的)
● 面接申し込みの時点で、食欲不振の概況を母親から聴いたが、本人に対し直接、食事や食欲、体重のことをたずねると、拒否的になるため、本人が自然に話し出すような対応をした。
(A:本人、相:相談担当者)
1. 本人との面接
相:どこか具合でも?
A:何か気が重いんです。
相:何か気になることでも?
A:ええ、進路のこと……。それ以来食欲がないんです。
(進路に対して、母親と本人の希望が一致していないことが、その後、明確になった。)
相:家では手伝いなどするの?
A:(急に生き生きし、体を乗り出しながら)夕食の用意をするんです。
相:ほう。(安心の表情を見せ)夕食の用意。
A:とってもおもしろいんです。
相:みんなと揃って食べるから、楽しいんでしょう。
A:……母がいろいろ言うから……。
相:いろいろ言う……。
A:「自分で作ったんだから食べなさい。」と何度も言うから…。いらいらしムカッとくる!!
相:何度も言われたら、だれだってそうなるよ。
(非常に緊張が高く、精神的にいらいらすること、体がだるいということから、CMI健康調査表による検査をする)
● CMI健康調査表
A子の症状は身体的な問題より、心因性の問題が内在し、準神経症ではないかと疑われる。2. 母親との面接
(以上の結果に基づき、専門医の診断を仰ぐことと食べることへの強制をしないことを指示した)
- A子は夕食を作るが食べない。しかし、家族の留守中に、清涼飲料水などを飲んでいる。嘔吐することがある。
- 現在、生理不順、便秘をしがちである。
- 汗かきで顔が赤くなること、ウェストが太いことをA子は、気にかけている。
- 体重減少が心配であることから、母親は、食べることと、体重測定を強要するが、A子は受けつけない。
- 本人のその他の状況について把握した。
(2)問題の概要
- 医師により心因性の症状であると診断された。
- 食べられないと言い食事はしないが隠れて食べている様子がある。
- 4月55kgあった体重が47kgに減少。身長150cm。
- 進路について、母親と意見が合わずイライラしていることが多い。
- 体がだるいと言い生活時間が不規則になってきた。
(3)第2回面接 (問題の背景把握の目的)
● 家族関係や両親の養育態度について
1. 本人との面接
● 本人から見た家族システム・力動