研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -059/071page
2年 自己中心的で思いやりに乏しい。また、興奮しやすい。
成績と出欠の状況からも、A夫の生活がだんだんと乱れていった様子がうかがえる。また、性格・行動の面にみられることが背景となって、つっぱりグループとの交友やシンナー吸引などの問題行動を起したものと考えられる。―社会的次元―
● 家族構成 ● 両親の養育態度親子関係診断検査(田研式)
父親は自分の要求を子どもに強要しがちで、それが通らないと暴力的になるなど拒否的傾向が強いが、子どもの日常生活、交友関係、学業などを心配して過度にかかわるなど一貫性に欠けている。母親は、期待感が強く過保護、過干渉である。しかし、拒否的態度も強く一貫性がみられない。
さらに、両親の養育態度には不一致が多く、夫婦の仲もよくない。このため、家庭の雰囲気にも温かみがない。この原因としては、面接から次のことが明らかになった。すなわち、母親は知的レベルが高く、事務員としての能力もある。これに対して、父親は中卒で、会社での地位も今一つである。これらのことを母親ははっきりと口に出すことはないが、言葉の端々や態度に表れることがあると父親は感じている。これを父親は酒で紛らすことが多く、これもまた夫婦げんかの種となっている。
―実存的次元―● 本人の考え
● 柔道に対して
- 父親からの生活面での注意には感情的になる。しかも、時に暴力もふるわれるので、父親を憎らしいと思っている。
- 母親の口うるささに強く反発する。
- 兄は両親から認められているので、兄に対してはよい感情を持っていない。
- 家の中はおもしろくなくて、できるだけ家から離れたい気持ちを持っている。
小学生のころから取り組んできているので、部活の練習でさらに技を磨きたいと思っている。● シンナー吸引に対して
家庭に対する不適応感が非常に強く、特に、父親に対する不満足感がシンナー吸引の背景となっている。また、自分については、意志が弱く、誘惑されやすいと思っている。
友達がしているのをまねて始めた。悪いと分っているが、気持ちがよくなるので吸ってしまう。父親とけんかした時などに吸うことが多い。5.診 断
A夫のシンナー吸引はつっぱりグループとの交友をきっかけとして始められたが、その後、ひとりで吸引するようになった。このことから、A夫