研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -060/071page
のシンナー吸引を判定すると、「独りで、非社交的、逃避的、耽溺的に物質常用する群(asocialtype)」に属すると考えられる。こうしたシンナー吸引へと進んだ相関関係を図示すると、次のようになる。
6.指導仮説両親連合の強化を基盤にした親子関係の改善と学校環境の調整などによって、A夫の愛情の充足と情緒の安定を図れば、シンナー吸引は消失するものと思われる。そのため、学校と当教育相談部との連携によって指導援助を進めるが、その内容は次の通りである。
● 学校での指導援助
- 喫煙や服装違反、学校抜け出しなど対症療法的に迫るのではなく、背景にある心情を理解するようにする。
- A夫の柔道に対する熱意を認めて、部活に一生けん命取り組ませる。また、柔道の精神を通して規範性をさらに育てる。
- つっぱりグループに対して、学年、学校としての体制を整えて指導にあたる。
● 当教育相談部での指導援助
7.指導援助の経過
- シンナー吸引による身体症状等の有無について専門医の診察を受けさせ、さらに専門医からシンナー吸引の恐ろしさを教えてもらう。
- A夫の気持ちを受容することによって、情緒の安定を図る。
- 両親連合の強化と養育態度の改善を基に、親子関係の調整を図る。
● A夫に対する指導援助
(1)シンナー吸引に対する当教育相談部の働きかけ専門医による診察の結果、現時点での心身への影響として、不安感や不適応感、疲労感、食欲不振、入眠困難などがみられた。その他、A夫はシンナー吸引による心身への影響を聞いて、これを機会にやめることを約束する。しかし、実際はその後も時々吸引が繰り返され、完全にやめることができたのは数か月後であった。
(2)情緒を安定させるための働きかけ当教育相談部では、カウンセリングを通して受容的、共感的に接した。また、話し方による対人関係のあり方に気づかせて、両親との会話によるトラブルを少なくさせていった。
学校では、担任が問題を抱え込むことなく、生徒指導部や部活動顧問、学年との連携のもとに、次のような指導援助を行った。これらの指導の結果、つっぱりグループは徐々に解体されていった。この環境の調整が、A夫の情緒を安定させていった。また、柔道部の担当教師による励ましが、A夫の柔道に対する意欲を一層高めていった。さらに、早い時点で就職の見通
- つっぱりグループに対する個別的な指導により、A夫との関係を切る。
- 柔道に対する熱意を認め励ます。
- 進路指導を通して将来への希望を持たせる。