研究紀要第70号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -067/071page

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(2)非社会的行動をもつ児童生徒への教育相談の進め方

 事例の分析の結果を中心に、学校での指導援助にとって要点とされる事項を次に述べる。

● 早期発見

  事例2、7では、学級担任が日常の観察により本人の問題に早く気がついていたことが問題解決の契機になっている。このように、問題を早期に発見することは、問題が深刻に、また、二次的な問題が派生する以前に対処することができる。特に、非社会的行動は問題が深刻になってから表面化することが多いので、常日ごろ、種々の非社会的行動についての特徴を熟知しておくことが必要である。

● ラポール(又は、リレーション)の形成

  次に、問題が取り上げられた時点では、性急に対症療法的を解決法を取らず、まず、本人や両親とのラポール形成に徹することが指導援助者の助言やカウンセリングを効果あらしめるために大切である。このことは事例5、7、8、9、13に見られる。

 非社会的行動を持つ児童生徒の多くは、対人関係に消極的で自己主張をしないなど全体的にエネルギーが低い。これが大きな要因となりラポール形成をはかることが困難である。ラポール形成をはかるには相手のペースに合わせた話し方や言動に配慮することが大切で、じっくり待ち、共感する姿勢が基本となる。

● 必要に応じた専門機関との連携

 本人や両親とのラポールが形成された時点で、必要がある場合は、各種専門機関との連携を図ることが必要である。すなわち、非社会的行動には医学レベルの精神障害が潜在している場合があるためである。事例5、6、7、10では、医師の診断を受け、さらに、当教育相談部との連携をはかっている。
 なお、連携する場合、学校の役割、専門機関の役割を明確にしておくことが大切である。

● 資料収集、診断、指導仮説

 すべての事例に見られるように、資料を収集し、診断をし、指導仮説を立てて指導にあたることが基本である。この場合、多次元的な見方、判断が大切である。

● 本人への指導援助

 すべての事例では、常に問題の背景にある本人の心情に目を向けた対応をしながら問題の素因に対しアプローチをしたことが問題の改善につながったものと思われる。

 非社会的行動には身体症状を随伴している場合が多い。この場合、身体症状の改善を主な目的にしたアプローチが効果的と思われる。それは、非社会的行動をもつ児童生徒の多くは、問題を自分の性格や考え方、生き方にあるとは考えず、原因を他にあると考えている。そのため、本人の問題点を指摘した場合、指導援助者との関係をそこなうことがあるためである。

● 家族への指導援助

 家族との信頼関係を十分につけた上で対応することが基本である。留意すべきことは、問題点を指摘するのではなく気づかせていくことである。

● 学級全体への指導援助

 非社会的行動をもつ児童生徒の多くは、自分から孤立しているか集団に受け入れられていないことが多い。そのため、自然な形で本人を集団に受け入れるような雰囲気づくりが大切となる。

● フィードバック

 なお、指導援助に当たっては、事例2に見られるように、必要に応じて資料収集、診断、指導仮説の過程でフィードバックする必要がある。

● 指導体制

 非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助の多くは個人的に進められていることが多い。しかし、効果的に改善や解決をはかるには組織的な対応が大切である。

● 指導援助の終了

 問題の解決を見た後でも自然を形でその後の様子を見守っていくことが必要である。

● 指導援助者の姿勢

 すべての事例に見られるように指導援助者が常


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