研究紀要第71号 「学校の経営過程における現職研修のあり方に関する研究 第1年次」 -032/126page
校内研修の授業者としての責任意織
問 8 自分が校内授業研究会で授業をすることになったとき,あなたはどんなことに心がけますか。
図−27 N= 510(小308,中113,高89)
< 考 察 >
校内授業研究は,研究主題に即した校内研修のかなめになるものであるから,全職員が共通の目的に向かって問題を解決するために,授業を通して努力する姿が望まれるところであり,1(丸囲み数字)の「なんとか授業だけは行う」とか,3(丸囲み数字)の「本意でないので他の教員に代わってもらう」などという態度は,あってはならないことであろう。しかし,回答の結果によれば,各校種とも人数は少ないがそのような教員が学校に1人でも存在していることは,校内研修推進上,大きな問題といえよう。一方2(丸囲み数字)の「精一杯努力して授業の意図を果す」が,小・中・高等学校それぞれ約61%,42%,40%に止まり,校内研修充実のために行う授業研究の持つ意味に対する意識の低さをうかがうことができよう。特に,中・高等学校の教員が,小学校の教員よりも約20%も下回っているのは問題であろう。 これに対して,4(丸囲み数字)の「できるだけ準備し,自分のために努力する」が,小学校約35%に対して,中・高等学校が約53%,54%と高くなっている。
この設問は,“精一杯努力とまではいかないが,できるだけ授業の準備をして,自分のためにもなるので努力する”という,2(丸囲み数字)よりやや消極的な意識をみる設問である。授業者として研究的に授業を行うことは,自分の職能としての授業の質を高めるという一面もあるが,それを重視するあまり,授業研究が学校の研究主題解明へ向けての重要な一要素であるという意識に欠ける面が出ているのではないかと懸念される。回答のように,中・高等学校教員の半数以上がそのような意識であるとすれば,問題は大きい。
そこでこのことに関して教員の意識を改善する必要があるが,問題点として考えられることは,授業者を含めた全職員に,校内研修の目的が,切実なものとして受けとめられていないのではないかということ。更に,研究的に行う授業が,校内研修の,計画(P)−実施(D)−評価(S)のどこに位置づけられているかの認識が不明確なまま,授業研究が行われていることはないかということである。
したがって,このことを踏まえた,改善の方向としては,
○ 研究計画の中の授業研究の位置づけを,研究の見通しに立って共通理解を図る。
○ それぞれの授業研究ごとに,意図する課題内容を明確にして授業を実施し評価する。
○ 授業者に主体性を持たせながらも,授業の目的達成へ向けて,組織的に援助し協力する態勢の具体化を図る。
などが考えられよう。