研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -044/126page

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III 本年度の研究

1.研究の概要

 基礎・基本と個性に関する文献研究及び,調査のための理論研究を進め,それを基に今後の研究の方向づけをするために実態調査を実施した。調査は,県内の小・中・高等学校の教師を対象とし,「基礎・基本の定着と個性の伸長」に関して質問紙法によって行った。その結果の集計と分析・考察については後述する。
 なお,今後の研究計画に照らし,その推進を図るための基礎資料として小・中学校の児童生徒を対象とした実態調査を実施した。その結果については< 資料 >として掲載する。

2.研究の経過

(1) 調査のための理論
 「基礎・基本の定着と個性の伸長」に関する先行研究及び文献等による基礎理論を踏まえて,次のような理論づけをした。
1 「基礎・基本」について
 基礎・基本は,徳・知・体の調和ある人間形成を目指すために必要なものであり,学校教育全般を通して定着されるものである。この定着を図るために,学習指導においては基礎的・基本的な内容を獲得させることが重要となる。
 この基礎的・基本的な内容は,人間の一生を通じての成長と発達の基礎となるものであり,主体的に生涯学び続ける力となり得るものである。
 そこで,学習指導における基礎的・基本的な内容を次の3つの要素から構成されるものと考えた。
  • 知識・技能
  • 関心・態度
  • ェクタビリティ (注) (判断力,表現力,創造力,思考力等の能力)
    (注) ジュクタビリティ(Jectability):造語
     ジュクタビリティは,judgement(判断),expression(表現),creation(創造),thought(思考)のそれぞれの頭文字に - ability(能力)を合成したものであり,本研究では判断力,表現力,創造力,思考力等の能力と規定して用いる。
2 「個性」について
 個性は生涯を通じて伸長していくものであるが,学校教育の時期こそ一人一人の個性が育まれていく上で大切な時期であるので,学習指導においても個性を生かし伸長させることが重要となる。
 ところで,児童生徒は,その考え方一つをとってみてもみなそれぞれに異なっている。それだけに児童生徒の持つ可能性をより伸ばすために,個をみつめた指導に改善するなど,児童生徒の持つ「よさ」に着目すべきであると考えるのである。すなわち,どの児童生徒も他の者とは異なるかけがえのない「よさ」を持っている。この「よさ」が生かされてこそ,自分自身の在り方と生き方を主体的に選択できる能力が高まるものと考える。
 そこで,本研究では,個性を児童生徒の一人一人が持っている「よさ」としてとらえ研究することにした。なお,ここでいう「よさ」は,個人内の卓越性であり,他人と比べたらむしろ目立たないものでも,その子どもにとっては個人内で光っているものである。すなわち個人内で特に顕著なものである。
 これらのことから,学習指導において個性を構成する要素を次の5つにとらえた。
  • 知識・技能
  • 興味・関心
  • 意欲
  • 学習適性
  • 意識・態度
3 「基礎・基本」と「個性」のかかわりについて
 基礎・基本は,すべての児童生徒に共通に身につけさせるべきものと考えなければならない。したがって,学習指導における基礎的・基本的な内容も共通に身につけさせるべき


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