研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -054/126page
かなりのばらつきがみられる。「知識・理解」と「操作・技能」については中学校,「学習速度については高等学校の方が,ばらつきの幅が大きい傾向にある。
(3) 個人差への対応の困難度
〔設問 3〕 普段の授業において個人差への対応に困難を感じていますか。
・ 結果と分析
<図 2−4> 個人差への対応の困難度
- 個人差への対応の困難度について,小・中学校とも「強く感じる」,「感じる」を合わせた割合が高くなっているのに対して,高等学校ではやや低い割合になっている。
- 「強く感じる」について着目してみると,小・中学校では半数を超えているのに対して,高等学校はやや低い割合になっている。
- 「あまり感じない」については,小・中学校の割合がわずかであるのに対して高等学校ではかなり高い割合になっている。
・ 考 察
個人差に応じた指導の必要性は,小・中・高等学校とも大部分の教師が認めている。しかし,その必要性について「強く感じる」ととらえている割合が,小・中・高等学校と進むにつれて低くなっている。個人差が顕著になる中・高等学校の生徒にこそ,個人差を−層考慮した学習指導が行われなければならないのではないだろうか。
次に,教師が共通的に個人差を感じる対象は,「知識・理解」である。このことは,実際の学習指導において,どちらかと言えば知識面の指導に中心がおかれていることを示していると思われる。一方,「見方や考え方」を感じる対象としている割合は比較的少ないが,このことは,一人一人の児童生徒の見方や考え方を生かし育てる指導があまりなされていないと受け止めることができるであろう。
また,小・中・高等学校間において,個人差の感じ方に差が見られるのは,それぞれの時期における学習内容や学習形態などの違いから生じたものと考えられる。
更に,中・高等学校において,教科別に個人差の感じ方をみた場合,「意欲・態度」は教科による差が見られず,かなり高い割合を示している。このことからすると,実際の学習指導において意欲・態度面について重視しているからだと思われる。また,「知識・理解」や「操作・技能」などに教科による差が見られるのは,各教科の特性の違いから生じたものと考えられる。
全般的に,個人差に応じた学習指導については,大部分の教師がその必要性を感じているが,実際の学習指導では種々の困難に直面している。しかし,よりよい指導法の確立のために,試行錯誤を繰り返しているのが,一人一人の児童生徒の個人差に応じた指導の現状であろう。