研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -061/126page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]


  1. この方法について,お考えがありましたら書いてください。
    • 記述された内容を分類すると導入することが「できる」「できない」理由,及びそのときの配慮事項等に分けることができる。特に,この方法の導入について,現状ではできないとする教師がほとんどであり,条件を整えることの必要性をあげている。
    • 「できる」として小・中・高等学校ともあげた主な条件は「現在の時間数を減らす」「一学級の人数を少なくする」「教員の数を増やす」などである。また,実際の導入にあたっては,「 T−T 」「 CAI の利用」などをあげている。高等学校では,習熟度別学習を多くあげている。
    • 「できない」主な理由として,小・中学校では,「カリキュラムの問題」,高等学校では,「入試制度」をあげている。
    • 導入について配慮しなければならないこととして,小・中学校では「基礎的・基本的な内容をより明確にする必要がある」「子ども一人一人が目標を設定し学習することは,子どもの能力から考えるとかなり難しい」「集団成員間の相互作用による学習の機能をどう考えるか」などをあげている。

・ 考 察
 個別化・個性化を目指すための学習形態について,実態調査の結果と分析をもとに考察を加えていく。
 学習者の進度の違いに応じて進める学習については,大多数がその必要性を感じている。しかも,この学習の導入の可能性については「できる」「条件が整えばできる」と考える教師が約9割を占めた。その学習を始める時期については,小・中・高等学校とも,それぞれの時期から始められると答えていることからも,児童生徒一人一人を大切にしたいという願いをもって指導にあたっている教師の姿勢がうかがえる。この学習を導入する方法については校種別や教科の特性を考慮する必要がある。
 児童生徒の興味・関心に基づいて学習コース・方法を選択させる学習については,その必要性を感じる教師が過半数を占めた。しかし,現状の学習指導からすれば,「自由に選択」させるということについて「感じない」あるいは「わからない」とする割合が高いことも見逃せない。また,この学習の導入については,「単元(題材)内」と「1学期間内」を含めてある程度の期間が必要であるという結果が出ており,更に,この学習の導入の方法としては,「教材の精選」「 T−T の導入」「方法・手順の工夫」があげられている。このことは,これからの研究の糸口を示していると考えられる。
 一人一人が目標を設定して進める学習については,その必要性は感じているが,その導入については「わからない」とする割合もかなり多い。また,記述された内容からみても,導入するには,厳しい条件が多い。したがって,現段階で導入することは,非常に困難であろうと予想される。
 これらのことから,現状では,個別化・個性化を目指すために従来の一斉指導から脱却して,一人一人の児童生徒に目を向け,学習者の進度や興味・関心に基づいた授業を志向しており,その学習を導入できる条件の整備と実践的な研究が要望されているものと考える。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。