研究紀要第72号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第1年次」 -066/126page
<図 5−3> 調査の内容
- 小・中学校は,ともに「身につけているべき知識・技能」が実態把握のための中心的内容になっているが,高等学校ではむしろ「単元についての興味・関心」の方がそれを上まわっている。
- 「身につけているべき知識・技能」については,小・中・高等学校と進むにつれて低くなっているのに対して,「単元についての興味・関心」は逆に高くなっている。
- 「児童生徒各自の見方や考え方」については,小学校では4分の1の回答者が選択しているのに対して中・高等学校では他の項目に比べてかなり選択者は少ない。
(3)「ほとんど調べない」「まったく調べない」と答えた理由
<図 5−4> 調べない理由
- 小・中・高等学校ともに「必要性は認めるが,時間に余裕がない」が圧倒的に多い。しかし,高等学校で必要性を認めない回答者が27%もいる。
- 「その他」としては,「方法的な面で困難を感じているから」(中学校),「授業の導入そのものである」,「進度の遅れが見られると困るため」(高等学校)などがあげられていた。
・ 考 察
「これから指導する単元に入る前の児童生徒の実態」調査については,回答者の4分の3が,アンケートや観察を通して,知識や技能,興味・関心に関する内容について行っているのが現状である。しかし,調べているとはいっても,回答の大部分が「ときどき調べる」である。これは図 5−4の結果を考え合わせると「時間に余裕がない」からによるものであろうか。アンケートや観察だけで児童生徒一人一人の満足なデータを得ることは難しいと思われる。しかし,今まで行ってきた方法・内容を否定するのではなく従来の方法・内容に工夫を加え,更に,よりよいものを取り入れていく必要があるだろう。例えば,方法としては面接を含めたり,内容としては知識や技能に偏るのではなく興味・関心とともに児童生徒の見方や考え方を含めるなど個性に直接触れることができるような実態の調査を考えていく必要があると思われる。