研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -085/126page
事例を通した教育相談の進め方に関する研究
−非社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助−
(第2年次)要 旨
2年次にわたる本研究のねらいは,非社会的行動をもつ児童生徒に対し,より的確で効果的な教育相談の進め方を確立することである。
そのために,昭和61年度における第1年次研究においては,非社会的行動の背景,発生のメカニズム,指導援助のあり方を事例を通して帰納的に追究し,「非社会的行動をもつ児童生徒への教育相談の進め方」として要点とされる11の事項を明らかにした。(研究紀要第70号P67参照)
第2年次研究である本年度においては,先に述べた教育相談の進め方の要点とされる11の事項が,指導援助の中で具体的に達成できるよう「手引」の作成を行い,11の事項の必然性を小・中・高等学校の実践例を通して演えき的に検証した。その結果,次のことが明らかになった。1. 非社会的行動をもつ児童生徒に対する指導援助の実践において,第1年次研究で帰納的に導き出した要点とされる11の事項によって指導援助に当たった結果,非社会的行動の改善につながったことが検証された。
2. 具体的な指導援助を進めるに当たって,要点とされる11の事項の達成を目指して作成した手引は指導援助の内容や方法等を知る指針として有効であり,しかも,非社会的行動の改善,並びに教師自身の指導力の向上に役立っていることが確認された。1. 解 題
本研究は,非社会的行動をもつ児童生徒に対しより的確で効果的な教育相談の進め方の確立を目指して行われた2か年にわたる継続研究である。
第2年次研究のねらいは次の通りである。
1. 第1年次研究において帰納的に追究した非社会的行動をもつ児童生徒への教育相談の進め方で,要点とされる11の事項を基にした指導援助は,問題の改善等には必要事項であることを実践事例を通して演えき的に検証することである。
2. 研究協力校において,非社会的行動に対する具体的な指導援助の実践を通して手引の有効性を検証することである。
3. 非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助の実践事例を提示し,教育現場における実践に役立てることである。以上のねらいを受けた研究の構想は次の通りである。
1. 非社会的行動をもつ児童生徒への対応の現状と課題を調査によって把握する。
2. 調査結果を基に非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助と要点とされる11の事項を具体化するための手引を作成する。
3. 第1年次研究成果及び上記2に基づいて作成した手引を基に,研究協力校において問題行動の改善に向けた実践研究を行い,11の事項の有効性を検証する。本研究は,以上のことを根幹にすえて進めたものであり,指導援助に役立つことを志向している。