研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -086/126page
2. 調査にみる非社会的行動をもつ児童生徒への対応の現状と課題
本調査は非社会的行動をもつ児童生徒への指導援助にとって要点とされる11の事項について学校での指導援助の現状を把握することを目的として,本県教諭(小127人,中133人,高119人,計379人)を対象として実施したものである。
以下に述べることは,昨年度調査「問題行動に関する調査」(研究紀要第70号)の結果と本調査の結果をもとに分析を試み,その概況を明らかにしたものである。今回はその一部を掲載する。
(数値は%表示で,全対象者数をもとにした)○ 早期発見
図 1 非社会的行動の特徴を知るための方法
図 1より,自分で経験しない事例以外についての早期発見は難しいものと考える。今後,早期発見のためにも非社会的行動の特徴を理解しておくことが望まれる。○ 資料収集,診断,指導仮説
表 1 問題行動の原因把握のために活用している資料(複数回答)
活用している資料 % ○ 出生に関すること 18.7 ○ 乳幼児期に関すること 15.0 ○ 身体的発達状況など 43.8 ○ 言語の発達状況 17.7 ○ 知能の状況 51.5 ○ 学業の状況 72.0 ○ 性格に関すること 79.2 ○ 交東関係に関すること 86.0 ○ 基本的生活習慣に関すること 62.5 ○ 運動,行動の特性 20.6 ○ 趣味,特技 26.6 ○ 習癖 19.5 ○ 家族の成員,年齢,職業 67.0 ○ 家族の雰囲気,心理的結び付き 77.0 ○ 家族成員の性格と養育態度 59.9 ○ 両親の教育に対する関心 59.6 ○ 家族成員の健康状態 14.2 ○ 家族の経済状態 43.0 ○ 住居,近隣の状態 24.0 ○ 家族の地域における活動状況 12.7 ○ 本人の生き方に関すること 35.9 ○ 家族の倫理観,人生観など 32.7 ○ その他 1.1
図 2 個別的な指導援助の計画の作成
表 1より,複数の観点からの資料を活用して問題行動の原因の把握がなされているが,図 2より指導援助の計画が大まかであることから資料を十分活用できていない懸念がある。今後,資料の総合的な活用と具体的な計画をもとに指導援助していくことが望まれる。○ 指導体制(図表省略)
半数近くが協力して指導する組織を有していると答えているが,問題行動を持つ児童生徒の状況報告と共通理解だけにとどまっている。今後,指導援助する組織を作るとともにその組織を十分に活用しながらより具体的に指導援助する態勢を整える必要が感じられる。